研究実績の概要 |
本研究の目的は病原体センサーである自然免疫受容体(pattern recognition receptors:PRRs)の発現パターンに基づいた発熱の新規鑑別法(原因別分類)を開発することで、以下3点に従って研究を進めている。【1】マウス各種炎症モデルにおける血中のPRRsの遺伝子、蛋白発現を経時的な変化を測定する。【2】原因疾患別にPRRsの発現をレーダーチャート表示し発現パターンを明らかにする。【3】集中治療中の発熱患者において末梢血中のPRRsの遺伝子、蛋白発現を測定し、パターン分類、解析を行う。平成27年度は、動物実験においてはマウス盲腸結紮穿刺(Cecal Ligation and puncture: CLP)と体表面積20%の三度熱傷(Burn)モデルを用い、Sham, CLP, Burnの3群で、受傷24時間後に全血よりtotal RNAを抽出し、定量RT-PCRにより自然免疫受容体(TLR2, TLR4, TLR9, NLRP3, RIG-I)の遺伝子発現を測定した。TLR2,TLR4,NLRP3の発現はCLP、Burnにおいて有意に上昇しており、TLR9の発現はCLPにおいてSham, Burnより有意に低下していた。遺伝子発現のパターンを比較するため、各受容体の遺伝子発現量を相対値としてレーダーチャート表示すると、各群で特徴的な遺伝子発現パターンを示した。またレーダーチャートの領域の面積比をbacterial infection index (BI)と定義して比較したところ、BIはCLPでSham, Burnより有意に高く、1.0をカットオフ値として感染性の炎症を判別することができた。本結果については2016年のアメリカ外傷外科学会で発表が決まっている。現在は経時的な遺伝子発現の変化とフローサイトメーターでの蛋白発現について測定中である。また、臨床検体を用いた研究においては、発熱患者においてはSIRS、DICを中心とした全身性の炎症反応の基礎的なデータ、病態を解析しており、その結果を踏まえて、今後は患者白血球における自然免疫受容体の発現とそのパターンを測定、解析して行く予定である。
|