研究実績の概要 |
本研究の目的は病原体センサーである自然免疫受容体(pattern recognition receptors:PRRs)の発現パターンに基づいた発熱の新規鑑別法(原因別分類)を開発することで、以下3点に従って研究を進めている。【1】マウス各種炎症モデルにおける血中のPRRsの遺伝子、蛋白発現を経時的な変化を測定する。【2】原因疾患別にPRRsの発現をレーダーチャート表示し発現パターンを明らかにする。【3】集中治療中の発熱患者において末梢血中のPRRsの遺伝子、蛋白発現を測定し、パターン分類、解析を行う。 平成28年度は、前年度の結果を第75回アメリカ外傷外科学会でポスター発表した。今年度はさらに、動物実験においてSham、敗血症モデル(CLP)、熱傷モデル(Burn)の3群で、侵襲後の自然免疫受容体の経時的な遺伝子発現を測定した(6,12,24時間)。全血からtotal RNAを抽出し、定量RT-PCRにより自然免疫受容体(TLR2, TLR4, TLR9, NLRP3, RIG-I)の遺伝子発現を測定した。TLR2,TLR4の発現はCLP、Burnにおいて受傷6時間後から有意に上昇した(p<0.05)。TLR9の発現はCLPにおいて12,24時間後でSham, Burnより有意に低下した(p<0.05)。NLRP3の発現はCLP、Burnにおいて6,24時間後で有意に上昇した。各受容体の遺伝子発現をレーダーチャート表示すると、受傷6時間後から各群で特徴的な発現パターンを示し、遺伝子発現パターンを比較するため判別分析を施行したところ、過誤率は3.03%(6時間後)、6.25%(12時間後)、6.06(24時間後)で3群を判別することができた。本結果は第76回アメリカ外傷外科学会での口演発表が決定している。
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