研究課題/領域番号 |
15K20348
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
川口 亮一 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (30609003)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 敗血症性心機能障害 / ミトコンドリア機能障害 / 亜硝酸塩 / 心保護作用 / ストレス応答 |
研究実績の概要 |
近年、虚血再灌流傷害における亜硝酸塩の心保護作用が注目されてきたが、敗血症病態における亜硝酸塩の影響は不明であった。我々はそこに着目し、ラット盲腸結紮穿孔モデルにおける亜硝酸塩は臓器レベル・ミトコンドリアレベルで心保護作用を示し、敗血症ラットの生存率を改善させることを実証してきた(研究課題番号:25861724)。本研究ではさらに解析を進め、分子レベルにおける亜硝酸塩の作用機序を解明することを目的とした。仮説として、亜硝酸塩は敗血症などのストレス環境において亢進するとされる酸化ストレスを軽減させることによって、心保護作用を示すと仮説を立てた。そこで早期敗血症に相当するCLP8時間後の心筋サンプルを用い、酸化ストレスに関与する諸因子(SOD、Glutathione、MDA、Nrf-2)について検討を行った。しかし、いずれの因子も敗血症による有意な変化を認めなかったことから、早期敗血症の時点では心筋における酸化ストレスの亢進は生じていないことが推測された。そこでストレス応答全般に検討対象を広げ、心筋におけるストレス応答に中心的役割を果たすとされるAktとNF-κBに着目し、Western Blotting法による検討を行った。その結果、敗血症心筋ではAktリン酸化が有意に低下し、NF-κBの核移行は有意に増加したが、亜硝酸塩はそれらの反応を有意に改善させることを確認した。これより、敗血症心筋における亜硝酸塩はストレス応答因子に関与することで、心筋ミトコンドリア機能および心収縮能を改善させていることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画で検討を予定していた酸化ストレスに関与する諸因子では有意差が認められず、検討内容を変更したことが主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症病態における亜硝酸塩と、心筋におけるストレス応答因子(AktやNF-κB)や心筋ミトコンドリアの関係を検討する。そのために分子レベル、遺伝子レベルでの検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた酸化ストレス系の実験系では各種項目について測定キットで検討し、さらにそれぞれについてウエスタンブロット等で検討を進める予定であった。しかし測定キットによる解析の段階で有意差を認めず、酸化ストレス系の実験を終了したため、当該年度の予算に余りが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後予定しているストレス応答全般の解析でウエスタンブロットやRT-PCRを予定しており、それらの消耗品等の購入に充てる予定である。
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