研究課題/領域番号 |
15K20349
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
大野 雄康 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (00745333)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 敗血症 / 炎症 / カヘキシー / lipopolysaccharide / 筋新生 / C2C12 |
研究実績の概要 |
敗血症は世界で年間2千万から3千万人が罹患する、非常に重要な疾患である。敗血症は死亡率が高いだけでなく、長期においても重篤な筋委縮(カヘキシー)を招き、著しくQOLを損ね大きな健康問題を引き起こす。従って敗血症が原因となる筋委縮の病態の解明は重要である。しかしながら敗血症が骨格筋の新生にどのような影響を与えるか、殆ど知られていない。我々は敗血症の最大の原因とされる、グラム陰性菌細胞壁成分lipopolysaccharide (LPS)が筋新生に及ぼす影響と、その機序の解明を試みた。研究は概ね順調に経過し、現時点で主に次の(1)-(3)の知見を得ている。:(1) LPS投与により筋新生は有意に抑制される (2)LPS投与により負の筋新生制御分子であるmyostatinが誘導され、正の筋新生制御因子であるmyogenin、MyoDの発現が抑制される (3)Toll like receptor 4 (TLR4)インヒビターのTAK-242を投与するとLPSによる分化抑制が部分的に修正され、これはmyostatin発現抑制とmyogeninの発現上昇を介している。 現時点で次の2つの新規の発見をしたと考える:(1)LPSが炎症性サイトカインのmajor sourceである好中球を介さず直接筋新生を抑制すること、(2) 薬理学的な炎症伝達経路の抑制が筋分化の回復につながることである。これまで得られた知見をもとに、これからはマウスin vivoモデルや、LPS-TLR4のさらに下流にあるNFkb活性の関与やその抑制薬の分化に及ぼす影響など、さらなる機序の解明と治療薬の探索を考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LPSが筋新生を抑制する分子機序の一部を解明できた LPS-TLR4炎症伝達経路の薬理学的な抑制が筋新生抑制を緩和することを発見できた
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今後の研究の推進方策 |
主に次の2点を中心に研究を展開していきたい。 (1) LPS-TLR4のさらに下流にあるNFkb転写活性がLPS誘導性筋分化抑制に関与しているかどうか、NFkb抑制薬を使って明らかにする NFkb転写活性の上昇は癌や除神経によるカヘキシーにも関与すると言われている。薬理学的なNFkb抑制が筋新生を回復させ得るかどうか情報が少ない。従って今後多いに展開させていく価値があると考える。 (2) マウス in vivo modelの確立 現在in vitroで薬理学的な炎症伝達経路の抑制が筋新生回復につながることを見出した。 LPSの投与、盲腸結紮穿刺などでマウスin vivoモデルを確立し、同様に炎症伝達経路の阻害が筋新生の回復につながるかどうか調査したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
Anti myogenin抗体、anti-myoD抗体、protease inhibitorなどの細胞生物学関連の試薬に使用したため。
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次年度使用額の使用計画 |
購入したこれらの試薬に対しては次年度も継続して使用する。
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