急性アルコール中毒は敗血症の増悪因子として知られているが、その機構にはまだ不明な点が多い。アルコールの生理的作用は多岐にわたるが、敗血症に及ぼす影響の一つとして、急性期タンパク・pentraxin3 (PTX3)への関与について検討した。 敗血症時には、さまざまな炎症性メディエーターが放出され、血管内皮細胞が傷害される。血管内皮細胞は生体の恒常性の維持に不可欠であり、これが破綻することによって、肺水腫から呼吸窮迫症候群へ進展し、死に至る。PTX3はTNF-aの刺激によりJNKのリン酸化シグナルを介して全身の組織で産生される。また、白血球(特に好中球)内に貯蔵されており、炎症発生時には白血球がすぐに動員され、素早くPTX3が利用できるシステムになっている。PTX3は、血管内皮細胞保護効果を持ち、敗血症の進展に対して防御的に働く。 我々は、アルコールがPTX3の産生を抑制することで、敗血症を増悪させることをin vitro および in vivoの実験の両方で明らかにした。in vitroの実験ではヒト臍帯静脈血管内皮細胞を、in vivoの実験では、cecal ligation and puncturre (CLP)法を用いた敗血症モデルマウスを用いた。アルコールはTNF-aの産生を抑制すること、JNKのリン酸化を抑制すること、またPTX3の貯蔵庫である白血球の動員を抑制すること、を明らかにし、これらの総合的な作用によりアルコールはPTX3の産生・利用障害をきたし、敗血症を増悪させることを明らかにした。
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