研究課題
急性心筋梗塞の急性期死亡率は経皮的冠動脈形成術によって著しく改善したが、左室リモデリングによって慢性期に心不全を発症し、その予後は不良である。本研究の目的は炎症細胞であるマクロファージに着目し、急性心筋梗塞後の炎症・免疫反応の制御により梗塞後左室リモデリングを抑制することである。JAK/STAT経路はIL-6等によって活性化されるサイトカインシグナルであり、SOCS3(Suppressor of cytokine signaling-3)は内因性ネガティブフィードバック因子としてこれらを負に制御している。マクロファージ特異的にSOCS3を欠損(SOCS3-mKO)させるとM1(炎症性)マクロファージにシフトする事が示されており、梗塞後リモデリングの病態におけるマクロファージSOCS3の役割を解明することとした。SOCS3-mKOマウスを用いて急性心筋梗塞を作成し野生型マウスと表現型、組織での心筋障害の評価を行ったが、両群間で有意な差をみられなかった。そこで次に心筋細胞におけるSOCS3に着目した。我々はこれまでに心筋特異的SOCS3欠損(SOCS3-cKO)マウスではJAK/STAT3経路の活性化を介して心筋梗塞後の心筋障害が抑制される事を明らかにした。ここで、虚血プレコンディショニングとは先行する短時間の虚血を繰り返すことで、その後の心筋障害が抑制される現象である。虚血プレコンディショニング後の心筋保護シグナルの活性化をウエスタンブロットで評価したところSOCS3-cKOマウスでは野生型マウスと比較し、心筋保護シグナルの活性化が増強・遷延していた。さらに虚血再灌流障害モデルを作成したところ、KO群では野生型と比較し梗塞範囲の顕著な抑制が見られた。今後はSOCS3-CKOマウスにおいて虚血プレコンディショニングの心保護効果が相乗的に増強する機序について解析をすすめていく。
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