研究課題
がん治療において,抗がん剤に対する薬剤耐性は,がんの再発や予後不良に影響する重大な因子である.本研究では,腫瘍血管を標的とした血管新生阻害療法においても薬剤耐性が生じる問題に対して,腫瘍血管内皮細胞の薬剤耐性関連トランスポーターの発現解析と,それらの阻害による薬剤感受性亢進による治療効果の改善を検討した.はじめに,マウス移植腫瘍からCD31陽性CD45陰性細胞として腫瘍血管内皮細胞を分離・培養し,in vitroで解析した.腫瘍血管内皮細胞の薬剤耐性関連トランスポーターの発現量を,遺伝子レベル(MDR1),タンパクレベル(P-gp)で比較したところ,腫瘍血管内皮細胞は正常血管内皮細胞よりも,薬剤耐性関連トランスポーターの発現が高かった.さらに,臨床検体を用いて,組織免疫染色法によりこれらの薬剤耐性関連分子の発現を検討した.その結果,腫瘍細胞のみならず,腫瘍血管においても薬剤耐性関連トランスポーターの発現が高いことが示された.さらに,それらの発現が抗癌剤治療の有無でも違いがあり,薬剤耐性関連トランスポーターの発現が高いとOverall survivalが下がることがわかってきた.したがって,薬剤耐性関連トランスポーターの発現ががんの予後に関連することが示唆された.そこで,薬剤耐性関連トランスポーターを阻害すると治療効果が改善されるかどうか,担癌マウスに抗がん剤単独投与,もしくは抗がん剤と薬剤耐性トランスポーター阻害剤との併用投与を行い,比較検討した.薬剤耐性トランスポーター阻害剤との併用投与により,抗癌剤単独投与よりも抗腫瘍効果が得られ,腫瘍径の減少,血管数の減少が観察された.以上より,腫瘍血管の薬剤耐性関連トランスポーターの発現ががんの予後に関連すること,それらの阻害が治療効果を改善することが示唆された.
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