研究実績の概要 |
生後5週齢野生型およびOpn遺伝子欠損(KO)マウスの上顎第一臼歯近心部に窩洞を形成した。抗nestin、抗OPN、抗DSP、抗DMP1免疫組織化学、Opn、col1a1、Dsppのin situハイブリダイゼーションを行った。また、リコンビナントOPN(rOPN)を用いて象牙質・歯髄複合体のin vitro器官培養を行った。さらに、術後3日の歯髄を取り出し、マイクロアレイにて遺伝子発現を解析した。術後1日では、野生型およびKOマウスにおいて、窩洞直下の象牙芽細胞のnestin陽性反応が消失していた。術後3日には象牙芽細胞様細胞が歯髄・象牙質界面に配列し、nestin陽性反応を示していた。野生型マウスでは、窩洞直下の歯髄細胞にOpnを強く発現する細胞が認められ、石灰化前線にOPN陽性反応が認められた。術後14日では、窩洞直下に修復象牙質形成が、髄床底側に反応象牙質形成が認められ、象牙芽細胞様細胞にDspp, col1a1の発現、DSP陽性反応が認められた。一方、KOマウスでは、術後3日で歯髄のDmp1遺伝子発現の上昇が認められ、窩洞直下の石灰化前線にDMP1陽性反応が認められた。術後14日において、髄角部で修復象牙質形成が阻害されており、象牙芽細胞様細胞に、Dspp/DSPの発現が認められたものの、col1a1の発現が認められなかった。象牙質・歯髄複合体の器官培養7日では、KOマウスにおいて、象牙芽細胞様細胞にcol1a1の発現が認められなかったが、rOPN投与群ではcol1a1の発現がレスキューされていた。以上より、歯の窩洞形成後の歯髄治癒過程において、石灰化前線へのOPNの沈着が、新たに分化した象牙芽細胞様細胞のI型コラーゲン形成、すなわち修復象牙質形成に必須の因子であることが明らかになり、Opn KOマウスではDMP1がOPNの機能を代償している可能性が示された。
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