研究課題/領域番号 |
15K20360
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹内 洋輝 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40572186)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯学 |
研究実績の概要 |
歯周病関連菌Porphyromonas gingivalis は、歯周組織を構成する歯肉上皮細胞内に侵入することにより宿主免疫からの攻撃を回避している可能性がある。しかし、P. gingivalis の細胞侵入機構、細胞内で利用する細胞オルガネラ、本菌の細胞侵入に対する免疫応答、そして感染後のP. gingivalis と宿主細胞の運命に関し、不明な点が多い。 そこで申請者は、初期エンドソームに存在するP. gingivalis がどのような制御機構で次のオルガネラへ輸送されるのか、宿主細胞因子に焦点を当て、検討を加えた。その結果、P. gingivalis は初期エンドソームへ輸送された後、宿主細胞内の小胞輸送に関与するとされるRab GTPase の1 つであるRab4A と共局在を示すことを確認した。また、歯肉上皮細胞のRab4A の発現をsiRNA によりノックダウンさせると、対照群と比較し、細胞内に存在するP. gingivalis の生菌数が増加した。さらに、Rab4A をノックダウンさせた歯肉上皮細胞では、対照群と比較し、感染後4 時間においても初期エンドソームに存在するP. gingivalis が多く認められた。 これらの結果より、P. gingivalis の初期エンドソームから次のオルガネラへの輸送にRab4A が関与する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
<到達度分析>短期目標は、P. gingivalis の初期エンドソームからリサイクリング経路への輸送に関与する宿主細胞因子の同定である。本研究計画の初年度にP. gingivalis の初期エンドソームからリサイクリング経路に至るRab GTPase 因子の候補が同定できた。 <原因・目標分析>初年度の目標は、本研究課題の達成のために必要であり、困難度も適切であった。 <課題検討>今回の目標管理を通じ、歯肉上皮細胞に侵入したP. gingivalis と共局在を示す新規のRab GTPase を確認した。初年度の研究により、P. gingivalis の宿主細胞内輸送に関与する可能性のあるRab4A タンパクに対する補因子のスクリーニングを開始することが出来た。この結果は、本研究課題を別のアプローチから遂行するために重要である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでP. gingivalis と共局在を示すRab4A の補因子は明らかにされていない。次年度は、初年度に同定した宿主細胞の候補因子につき、タグ蛋白質との融合蛋白質を歯肉上皮細胞に発現させ、Rab4A と複合体を形成する補因子を同定する。さらに、P. gingivalis のリサイクリング経路を通じた輸送には、本菌の病原因子が積極的に関与している可能性がある。そこで、P. gingivalis の変異株を用い、どの病原因子がRab4A を含む小胞輸送を誘導しているか明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では、標的となる遺伝子の機能を調べるため、ヒト細胞の継続的な培養が必要となる。平成27年度は機能遺伝子の同定が研究計画よりも早く進んだため、計画の見直しを行った。そのため、培養に必要な購入予定試薬の節約により未執行額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、平成27年度で同定した遺伝子の機能およびその生理学的な意義を調べる。当該未使用額は補助事業を誠実に遂行した結果生じたものであり、平成28年度に使用することにより、標的遺伝子に係る結合因子をより詳細に解析することができ、本研究課題がさらに進展することが見込まれる。
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