未熟骨芽細胞はコラーゲンの走行がランダムな線維骨を形成するが、線維骨は容易に破骨細胞によって吸収され、成熟した骨芽細胞がコラーゲンの走行が一定の層状骨を形成する。骨芽細胞の成熟過程で、Runx2の発現は未熟骨芽細胞に強く、成熟とともにその発現は低下する。我々は、2.3 kb I型コラーゲンプロモーターを用いて、骨芽細胞特異的にRunx2を過剰発現したトランスジェニック(tg)マウスを作製したが、骨芽細胞の成熟が抑制され、骨は未熟骨芽細胞で占められていた。全身の骨は、線維骨によって形成されており、高頻度に骨折が観察された。成熟骨芽細胞マーカーであるオステオカルシンの発現も著減していた。興味深いことに、Runx2 tgマウスではほとんど骨細胞が存在しなかった。また、電子顕微鏡で観察すると、骨芽細胞の突起が著減していた。すなわち、これまで、骨芽細胞の分化・成熟は、産生される基質の種類と量によって規定されてきたが、突起形成を主とした細胞骨格の変化が骨芽細胞の成熟を規定している可能性が示唆された。 10週齢の野生型マウスおよびRunx2 tgマウスの骨芽細胞よりmRNAを抽出、マイクロアレイで、野生型マウスとRunx2 tgマウス間で、2倍以上差があるcytoskeleton関連遺伝子を選択した。リアルタイムRT-PCRで確認後、MC3T3-E1細胞にRunx2あるいはRunx2のsiRNAを導入、選択された遺伝子が誘導あるいは抑制されるか検討した。さらに、Runx2 tgマウスで発現増加、Col1a1 Creを用いたRunx2fl/fl Creマウスで低下した1遺伝子を候補遺伝子とした。さらに、その遺伝子のプロモーターを用いたレポーターアッセイで、Runx2による活性誘導を確認した。これらに結果により、この分子が、Runx2による細胞骨格の制御に関与していると考えられた。
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