研究実績の概要 |
平成27年度はAggregatibacter actinomycetemcomitansの表層タンパクの同定をLC-MSにより行った。菌体表層タンパクの分離にはトリプシンを用いた。グラム陰性菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansは表層構造がグラム陽性菌と比較し強固でないため、菌体の溶解に注意する必要が考えられた。そこでトリプシン作用時のbufferをPBS, HEPES等に浸透圧調整用のスクロース、トリプシン反応を促進するためのカチオンの量を調整し解析を行った。しかしながら、得られた結果には表層タンパクと考えられるものだけではなく、多くのリボソームタンパクやシャペロン類、エノラーゼ等が多く含まれていた。これらが菌体表層に付着する例は他菌の解析により知られているものの、今回の結果では菌体の溶解由来のタンパクが多く検出されたと考えている。より菌体表層特異的なタンパクを回収する実験法の確立を現在行っている。 Aggregatibacter actinomycetemcomitansは、過去の報告例より、カタラーゼにより他菌由来の過酸化水素を無毒化すること、また他菌の出す代謝物を利用し、口腔内に定着していることが示唆されている。これらの因子のvivoにおける役割を解析するために、遺伝子破壊株の作成しやすいStaphylococcus aureusにてこれらの解析を行った。結果、他菌との共局在やマウス毒性に有意な違いが認められる株が得られたのでAggregatibacter actinomycetemcomitansの表層因子解析においても、該当する因子が同定された際は優先的に病原性解析をすることにする。
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