研究実績の概要 |
唾液腺初期発生において唾液腺原器およびその直上の口腔粘膜に発現する転写因子としてSox9を同定した。マウスES細胞からSFEBq法を用いて誘導した口腔粘膜上皮部分にアデノウイルスを用いてSox9を含む転写因子群を一過性に過剰発現させることでEBの分枝形態を誘導することに成功した。さらに誘導した3次元唾液腺様組織はAQP5, K18, α-SMAを発現し、RNA-seqを用いた網羅的な遺伝子発現解析では胎生18日唾液腺組織と極めて類似した発現プロファイルを示した。このES由来唾液腺組織はin vitroにおいて、カルバコール刺激により濃度依存性にCa releaseが認められ、水分泌におけるシグナルについても機能を有していた。加えてES由来唾液腺組織を胎生期唾液腺間葉組織と共培養することでES由来唾液腺に唾液様の粘液が貯留することも明らかとなった。また移植実験として耳下腺全切除マウスへGFP陽性ES由来唾液腺組織を胎生期唾液腺間葉組織と共に移植することによって、移植後1ヶ月で唾液腺様の組織が同所移植部位に生着していた。移植後1ヶ月で移植唾液腺以外の唾液腺全切除マウスの唾液分泌能解析の結果、移植した唾液腺は既存の耳下腺排泄導管と接続し、ピロカルピンの腹腔内投与によって移植唾液腺由来の唾液を口腔内に分泌することが明らかとなった。
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