研究課題/領域番号 |
15K20369
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
福島 美和子 昭和大学, 歯学部, 助教 (90548273)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 亜鉛 / 亜鉛輸送体 / lmマウス |
研究実績の概要 |
今年度は亜鉛トランスポーターZnT4の自然発生型ミュータントマウスC57BL/6J-Slc30a4lm/J(lmマウス)の繁殖と分泌能の検討、および正常顎下腺細胞株NS-SV-AC細胞におけるZnT4遺伝子発現およびタンパク質発現を検討した。 1.理化学研究所より移管した受精卵を偽妊娠雌マウスに移植し、21匹のヘテロlmマウスを得た。ヘテロマウスの交配により雌雄のホモマウスを得た。lmマウスは800mg/L 塩化亜鉛水で維持し、著変無く飼育可能だった。lm雌マウスから採取した耳下腺から酵素消化法により腺房を作製し、β受容体アゴニストのイソプロテレノールで細胞懸濁液中の腺房を刺激しタンパク質分泌を誘導した。タンパク質分泌能は、懸濁液中のアミラーゼ活性で測定した。結果、野生型とlmマウスの間に有意な差はみられなかった。以上の結果は亜鉛輸送体がアミラーゼ分泌には影響しないことを示唆している。 2.ヒト正常顎下腺腺房細胞株のNS-SV-AC細胞におけるZnT4遺伝子とタンパク質発現をそれぞれ定量的PCR法およびウェスタンブロット法で検討した。定量的PCR法の結果、内在性のZnT4遺伝子量は極めて少ないことが明らかとなった。さらに、ウェスタンブロット法ではマウスZnT4プラスミドを過剰発現させた場合と比較して、内在性タンパク質発現は極めて少なかった。この結果からは、内在性の遺伝子のみでの機能解析は困難であることが明らかとなった。この問題を克服するため、pMX-IRES-GFPベクターにヒトZnT4遺伝子を組み込んだプラスミドベクターを作製した。 1,2の結果を踏まえ、新年度はlmマウス唾液中の亜鉛濃度測定により、唾液への亜鉛分泌にZnT4が果たす役割を検討する。さらにNS-SV-AC細胞に対するZnT4遺伝子の過剰発現が細胞の分泌機能および形態に与える影響を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.lmマウス受精卵からの体外受精によるヘテロマウスの作製は完了している。また、その後の繁殖でホモlmマウスを得ることに成功している。マウスの維持は塩化亜鉛水で行っており、水のみで飼育した場合にみられる皮膚炎や腸炎の発症は出現していない。さらにタンパク質分泌能の検討により、アミラーゼ分泌にZnT4の機能異常は関係しないことが明らかとなった。現在、唾液中の亜鉛量を測定する準備を行っている。 2.当初使用予定だったNS-SV-AC細胞には内在性のZnT4遺伝子発現量が少ないことから、過剰発現用プラスミドベクターを用いた遺伝子の過剰発現で機能および細胞内局在の解析を行うことにした。ベクター作製は完了し、現在過剰発現の条件検討を進めている。遺伝子発現の抑制にはshRNAを用いる予定で、条件検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は唾液からの亜鉛分泌能の検討を行うため、lmマウスの唾液中の亜鉛量を比色法およびマススペクトロメトリーを用いて検討する。さらに、NS-SV-AC細胞に対するZnT4遺伝子の過剰発現を行い、アミラーゼ産生に対する影響を検討する。さらに、NS-SV-AC細胞に対するZnT4遺伝子の過剰発現および発現抑制を行った時のタンパク質分泌能および細胞内の分泌顆粒の形態に与える影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はマウスの繁殖・飼育およびin vitro実験用の条件検討に予想より時間を要したため、本来行う予定であった反応実験系に必要な試薬の購入に至らなかった。条件検討はほぼ完了していることから、今年度に使用する予定だった額を次年度に使用するように計画を変更した。また、旅費および論文投稿費についても次年度に使用予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は消耗品購入及び旅費に使用する予定である。具体的には、消耗品として1.細胞培養試薬および培養器具(培地、ピペットなど)、2.マウス行動観察用器具(ケージ、水ボトルなど)、3.唾液腺細胞刺激薬および阻害剤(受容体刺激薬、増殖阻害薬など)の購入に充当する。また旅費としては第27回日本臨床口腔病理学会(8月10-12日、広島)への参加を予定している。
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