研究実績の概要 |
胎仔マウス唾液腺の組織間において、マイクロRNAが輸送されシグナルとして寄与することが示唆されている。唾液腺間葉と乳腺上皮とを再構成させると、本来は乳腺としての形態を示す上皮が、唾液腺様の形態になることが、これまでに報告されている(Sakakura et al., Science, 1976)。このことから、唾液腺間葉が上皮に対して何らかの誘導をかけて、エピジェネティックな変化(DNA塩基配列の変化によらない遺伝子発現の変化)をもたらすことが考えられる。しかし、その全貌は未解明のままである。本研究は唾液腺間葉から輸送されるマイクロRNAが、この現象に寄与しているのではないかと仮説を立てた。 まず、基盤的知見として発生期を通じて唾液腺上皮のエピジェネティックな状態を調べたところ、あるステージを境に劇的に変化することが分かった。興味深いことに、間葉から輸送されるマイクロRNAについてそれらの標的遺伝子を調べたところ、エピジェネティックな変化をもたらす複数の遺伝子が標的となりうることが分かった。つまり、唾液腺間葉からのマイクロRNAは輸送先の上皮においてエピジェネティクスを制御することが示唆された。したがって、唾液腺間葉からのマイクロRNAは、乳腺上皮を唾液腺様の形態へと変化させるシグナルの一つとして、エピジェネティックな変化を誘導している可能性がある。本研究計画は最終年度を終えたが、さらに継続してこの課題に取り組んでいく。
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