研究課題/領域番号 |
15K20371
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
永尾 潤一 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (30509047)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 病原真菌 / 免疫応答 / Th17細胞 / 口腔カンジダ症 |
研究実績の概要 |
口腔カンジダ症は、病原真菌Candida albicansが原因となる口腔疾患で、高齢化が進む我が国において患者数が増加している。C. albicansに対する生体防御機構としてIL-17産生を特徴とするTh17細胞による獲得免疫応答が重要な役割を果たすことが分かっているが、そのメカニズムは不明である。今年度は、ヘルパーT細胞をTh17細胞に分化させるC. albicans由来のエピトープを同定することを目的とした。全ゲノムシーケンスが判明しているC. albicans SC5314株を用い、In vitroにおいて、SC5314株由来のタンパク質を抗原として骨髄由来樹状細胞に抗原提示させ、CD4+ T細胞の分化をIL-17産生を指標にFlowcytometryにより評価した。C. albicansは酵母形と菌糸形の2つの形態を示す二形性真菌であるため、両形態の細胞から抗原を探索した。その結果、両形態の細胞からそれぞれTh17分化誘導能がある菌体構成成分を見出した。候補となる菌体構成成分のTh17分化誘導能は、プロテアーゼ処理や熱処理により消失したことからタンパク質性であることが分かった。さらにRP-HPLC、二次元電気泳動による分画により抗原タンパク質を絞り込み、プロテオミクス解析により同定を進めている。またC. albicansを胃ゾンデで経口投与することにより、末梢リンパ節T細胞のC. albicans抗原に対するTh17細胞への分化能が上昇することが明らかとなった。これにより、C. albicansに対する免疫応答は消化管を介して全身性に応答することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りにTh17細胞への分化を誘導するC. albicansの抗原の同定を進めることができている。酵母形と菌糸形から候補となる画分を見出し、RP-HPLCや二次元電気泳動により、抗原を絞り込むことが出来た。現在、九州大学 生体医学研究所プロテオーム研究センターの協力を得て解析中である。また、今年度はマウスを用いた感染実験を立ち上げることができ、C. albicansの経口投与により全身性にT細胞の免疫応答が起こることが明らかとなり、次年度に繋がる系を構築することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って、今後の研究を推進していく。 ①現在解析中のT細胞エピトープの同定を進める。プロテオーム解析により同定されたタンパク質を大腸菌で発現させ、精製後にTh17分化誘導能を評価する。同定したタンパク質は、さらにオーバーラッピングペプチドを作成し、抗原部位を同定する。また、同定されたタンパク質をコードする遺伝子を破壊したC. albicans株を構築し検証する。 ②C. albicansに対する免疫応答を全身、特に口腔と腸管に着目して解析する。現在構築中の口腔カンジダ症発症マウスを用いて、C. albicans反応性T細胞の分化の場と全身における細胞遊走を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画通りに順調に研究が進んでいるものの、研究費の充足率が100%ではなく、次年度に計画している実験に本年度以上の予算を必要とするため、次年度に持ち越すことに決定した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究遂行に必要な設備備品は既に導入されている。よって、持ち越した研究費は主に消耗品などの物品費に使用する予定である。以下に使用用途を明記する。本年度の計画研究では、微生物培養、細胞培養、遺伝子実験、生化学実験などの専用試薬や消耗品を要する。DNA合成、DNA配列解析、タンパク質配列解析、ペプチド合成、抗体作製など、外注解析のための経費を必要とする。また、動物実験に必要なマウス購入のための費用が必要となる。さらに、本研究の更なる発展のためには、最新情報の収集、および研究成果をアピールする必要があるため、学会等に参加する旅費を必要とする。
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