研究課題
口腔カンジダ症の原因となるCandida albicansに対する生体防御機構として、Th17細胞による獲得免疫応答が重要な役割を果たすことが分かっているが、そのメカニズムは不明な点が多く残されている。本年度は以下の解析を行った。①前年度から進めているヘルパーT細胞をTh17細胞に分化させるC. albicans由来のT細胞エピトープの同定を試みた。Th17分化誘導能がある菌体構成成分として見出した菌糸形の細胞膜成分に関して、RP-HPLCと二次元電気泳動による分画により抗原タンパク質を絞り込み、プロテオミクス解析によりタンパク質を同定した。スコアが高かったタンパク質に関して、大腸菌において大量発現させ、精製タンパク質を調製した。精製タンパク質からTh17分化を誘導するものが見出されており、現在オーバーラップペプチドを用いてT細胞エピトープの同定を進めている。②同定した菌糸形の細胞膜成分で分化させたTh17細胞を尾静脈より養子移入したマウスに口腔カンジダ症を発症させ、病態抑制効果を検証した。その結果、Candida抗原特異的なTh17を移入したマウスでは比較群と比べ口腔カンジダの臨床スコアを優位に低下させ、組織学的評価においても多核白血球の浸潤の減少が認められた。研究期間全体を通して得られた結果として、C. albicansに対するTh17細胞による免疫応答は消化管を介して全身性に応答することを明らかとした。さらに、菌糸形の細胞膜成分中のタンパク質は、抗原特異的にTh17細胞を誘導することで口腔カンジダ症を抑制することが示された。本研究で絞り込んだ菌糸形の細胞膜成分中の候補タンパク質は、口腔カンジダ症のワクチン開発に発展すると期待される。
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FEMS Yeast Research
巻: 18 ページ: -
10.1093/femsyr/foy018