本研究では、2型糖尿病と遺伝的相関を有する開口分泌調節タンパク質 tomosyn のインスリンシグナルによる調節の分子機構を解明することを目指した。インスリンによって活性化されるリン酸化酵素 Akt が tomosyn の 783 番目のセリン (783S) をリン酸化することを示した。GLUT4 (糖輸送担体) を含む小胞輸送に関わる SNARE タンパク質の1つである syntaxin 4 と tomosyn の結合は、tomosyn の Akt によるリン酸化によって抑制された。野生型 tomosyn 発現細胞では、 インスリン刺激に伴う GLUT4 の細胞表面への発現亢進を認めたが、S783 をアラニンに置換した変異型 tomosyn 発現細胞では GLUT4 の膜発現亢進が損なわれていた。以上の結果から、Akt はインスリン刺激に伴って tomosyn の S783 をリン酸化することで syntaxin 4 との結合を調節し、GLUT4 輸送を制御することが示唆された。
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