研究課題
本研究の目的は、我々がこれまで研究を続けてきた腫瘍溶解アデノウイルス(AdΔE4)が、シスプラチン(CDDP)に抵抗性を示す口腔がんに奏功し、AdΔE4とCDDPとの併用療法が成り立つかを検討することである。これまでにCDDP耐性細胞に対するAdΔE4の腫瘍殺傷効果が正常細胞と比較して高いことを示した。また、CDDPとAdΔE4の併用による腫瘍殺傷効果の検討の結果、それぞれの単独使用よりも併用により腫瘍殺傷効果が増強されることが示された。また、CDDPとAdΔE4の併用による腫瘍殺傷効果の増強のメカニズムについて検討した。これまで申請者らは、HuRがより多く核外輸送されている細胞でAdが増殖し、細胞溶解効果が増強されることを示した。そこで申請者はCDDPで処理したがん細胞におけるHuRの局在の変化を検討し、CDDP処理によりHuRが核外輸送されることが示された。このことからがん細胞にCDDPを投与すると、HuR/ARE-mRNA複合体が核外輸送されてARE-mRNAが安定化し、AdΔE4の生産効率が増加することで腫瘍溶解効果が高まることが示唆された。今年度はCDDPの他、5-FUやエトポシドなど他の抗がん剤とAdΔE4の併用効果を確認した。まず5-FU、エトポシドとAdΔE4をがん細胞に投与し、HuRの局在の変化を検討した。その結果、抗がん剤を投与した細胞ではcontrolと比較し、HuRの細胞質における局在が増加した。また、がん細胞に5-FUとAdΔE4を投与すると、単独投与群と比較し、併用群では腫瘍溶解効果が高まることが示唆された。以上の結果より、AdΔE4とさまざまな抗がん剤の併用により、AdΔE4の腫瘍溶解効果が高まることが示唆され、今後臨床応用への発展が期待される。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 495 ページ: 1795-1800
10.1016/j.bbrc.2017.12.036