研究課題/領域番号 |
15K20382
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
能村 嘉一 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (60632081)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コーンビームCT / 画質 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続き歯科用cone-beam CT(CBCT)を用いて、その画質に大きな影響を与えるリングアーチファクトの新たな定量的評価法を構築した。また、そのために必要なリングアーチファクトを定量的に評価する際に用いるプログラムの開発を行った。 今年度新たに構築したリングアーチファクトの定量的評価法では、昨年度までに構築した手法に加え新たにNoise Power Spectrum(NPS)を算出し、様々な撮影環境におけるより客観的な比較を可能とした。このリングアーチファクトに対応したNPSの算出については既存のプログラムでは不可能であっため、今回新たにDelphi XE6(Embarcadero Technologies, Inc.)を用いて独自プログラムを開発し、計算処理の自動化が出来るようにした。これらを用いて3DX FPD(モリタ製作所)によりウォーターファントムを撮像した画像に発生したリングアーチファクトのNPSを算出した所、水平断面画像の中心付近と辺縁付近に明らかな差が存在することを確認した。この知見について、東京にて開催された第81回口腔病学会学術大会において発表を行った。今後この知見をもとに、英語論文を作成する予定である。 リングアーチファクトを初めとした雑音と共に画質を左右する分解能については、本研究で計画していた通りそれに必要なModulation Transfer Function(MTF)を算出するプログラムの開発が完了しており、リングアーチファクトについての報告が完了して後、MTFに関する知見についても、昨年度から準備している撮像設定と画素値の変化に関する知見と併せて報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【概要】にて述べたとおり、今年度はCBCTを用いて主にリングアーチファクトの調査を進め、また、そのために必要なプログラムの開発を行った。CBCTの画質は、分解能及び雑音が二大要素であると考えて差し支えなく、CBCTにおいてリングアーチファクトはこのうち雑音のよく知られた一種である。しかしながら、CBCTにおけるリングアーチファクトについての既存研究は我々の知る限りほぼ存在せず、極めて新規性の高い研究だと思われる。そこで、当初の予定とは異なる形となったが、昨年度から行っているリングアーチファクトの評価法について発展をさせ、CBCTのリングアーチファクトについてNPSの算出を可能とした。この手法を用いて実際のCBCT画像についてリングアーチファクトの評価を行った所、リングアーチファクトの強さは水平断面における中心付近と辺縁付近で異なることが明らかになった。この新たな知見により、実際の臨床における撮影においてもスキャンターゲットの位置付けについて再検討が必要になるかもしれない。そこで、当初の予定とは異なる形となったが、まずこの知見について英語論文を作成する方針となった。 一方で、当初から予定されていたMTF等による分解能の客観的評価に関する研究結果については、可能であれば他機種のCBCTでもデータを獲得した上で、先述のリングアーチファクトに関連した論文作成後に報告することとした。MTF等を評価するためのプログラムの開発については、当初の予定通り以前の我々の研究にて独自に開発したプログラムのソースコードを改修する形で行われ、既にプログラムが動作する状態である。ただし、必要に応じて新たな機能を追加するために今後更にプログラムを改修する。 以上のことから、当初の研究計画から変更した点はあるが、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
【概要】及び、【現在までの進捗状況】にて記載した様に、CBCTの画質評価として当初予定していた分解能以外に、雑音の一種としてよく知られたリングアーチファクトの新たな定量的評価法を構築して実際のCBCT画像を評価した所、リングアーチファクトの強さにおいて位置依存性があるという知見を得ることが出来た。我々が知る限り、そもそもCBCTのリングアーチファクトについての報告は殆ど存在しないが、更にこの知見は、CBCT撮影においてスキャンターゲットの最適な位置付けを左右し得るという点で大変重要である。今後この知見について学会での発表、及び、英語論文の作成を予定している。現時点で一機種のCBCT(3DX FPD8)を用いた研究を予定しているが、今後可能であれば今回確立したリングアーチファクトの評価法を応用し、複数の機種についても調査を広げ比較を行い、研究を発展させていく所存である。なお、この複数の機種を研究対象に入れた場合、新たなプログラム開発が必要になる可能性があるが、これまでの研究においてDelphi XE6等を用いたプログラム開発のノウハウは十分に取得済みであり、プログラム開発に際して大きな困難は存在しないと考えている。 当初予定していたMTFを用いたCBCTの分解能の評価については、リングアーチファクトの研究報告の後に続けて行う見込みである。こちらについても、可能であれば複数の機種を対象に調査を行い比較を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では本年度の予定として、学会発表用の旅費の直接経費として60,000円と、英語論文投稿の校正費用の直接経費として40,000円を計上していたが、学会発表を自宅に近い都内で開催された第81回口腔病学会で行ったこと、及び、英語論文投稿の予定を変更して後に回した結果、これらについては支払請求額が発生しなかった。 また、プログラム開発やCBCT撮影で用いた物品は全て手持ちの範囲で済んだので、前年度未使用額6,054円についても支払請求を行わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も学会発表及び英語論文投稿を予定しているので、これらについて本年度支払請求しなかった分については次年度にまとめて利用する予定である。 前年度未使用額6,054円については、消耗品を購入する際に利用することを考えている。
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