研究課題/領域番号 |
15K20384
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
阿部 達也 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (70634856)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 細胞競合 / プロテオミクス / 口腔扁平上皮癌 / 口腔上皮内癌 |
研究実績の概要 |
癌-非癌部界面における細胞競合現象をはじめとした細胞間相互作用をタンパク質発現動態から解析することを目的に、とくに明瞭な界面を形成した口腔扁平上皮癌(SCC)・上皮内癌(CIS)10例を選択し①界面から遠位の癌組織、②界面に直接する癌組織、③界面に直接する非癌組織、④界面から遠位の非癌組織の各4区域40試料をケラチン(K) 13・K17免疫組織化学(IHC)併用下でレーザーマイクロダイセクション(LMD)法にて分取して、それらを液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法でプロテオーム解析した。 その結果、癌部(区分①+②)で4,035タンパク質(3,138遺伝子)、非癌部(区分③+④)で2,812タンパク質(2,236遺伝子)が同定され、SCC・CIS細胞における発現タンパク質の多彩性が確認された。emPAI法を用いて定量比較を行うと、非癌部に比べ、癌部でK17の増加(11倍)とK13の減少(69倍)がみられ、K13/K17相互増減を口腔SCC・CISの診断補助手段としてきた有用性が再検証されたと同時に、LMD法による試料採取が正確に行われていたことが確認された。また、114分子・9分子が、それぞれ癌部・非癌部特異的タンパク質として同定された。ついで、癌部と非癌部の隣接・遠位2区分間を比較したところ、ladinin-1、interleukin-1 receptor antagonistなど7分子の増減がみいだされた。これらの特定された分子の癌・非癌部特異的発現状況は口腔SCC・CIS組織標本と培養HSC-2細胞においても検証され、これらの分子群が癌‐非癌細胞間相互作用に関連する可能性が示唆された。現在、報文を作成中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌-非癌界面を含む組織標本のプロテオーム解析では、レーザーマイクロダイセクションを用いて領域選択的に解析を行うことで、癌-非癌界面に関連したタンパク質発現状況を網羅的に同定・把握できた。また、同定されたタンパク質から癌-非癌細胞間相互作用に関連すると思われるタンパク質候補の抽出を行い、病理組織標本および口腔がん由来培養細胞株での検証を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
選択された候補タンパク質に関して、より多数例かつ癌-非癌界面の明らかでない症例に検索対象を拡張して、病理組織標本上での検討を行い、in-vivoでの発現特性を明らかにする。また、培養細胞株を用いて、これらのタンパク質・遺伝子発現状態もより詳細に検討し、発現抑制・強制発現実験による細胞機能試験を行う予定である。異なる細胞株の共培養条件で、候補タンパク質の細胞間相互作用における機能的関連についても検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも効率的に試料収集・解析が行えたため、レーザーマイクロダイセクション必要物品やタンパク質質量分析のためのタンパク質精製等に関わる物品費用が抑えられた。
|
次年度使用額の使用計画 |
候補タンパク質の検討のための抗体購入および遺伝子実験のプライマー設計・購入に充当する予定である。
|