研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌 (SCC)・上皮内癌の病理組織標本を用いた病理形態学的検討およびプロテオーム解析により、癌-非癌界面組織で特異的な発現増減を示す7タンパク質が同定された。これらのタンパク質の機能を、主に培養細胞を用いた in-vitro実験系で検証した。 口腔SCC細胞株HSC-2、-3、-4各細胞株を用いて、癌界面組織で特異的な発現増加を示すタンパク質のうちladinin-1(LAD1)の発現をsiRNA法により抑制したところ、細胞の増殖が有意に抑制された。特にHSC-2では, 他の細胞株に比べて増殖抑制が顕著であった。LAD1抑制HSC-2細胞における細胞死を検討したところcleaved-caspase 3 免疫細胞化学法・TUNEL法で、陽性細胞が有意に増加していた。この結果から、LAD1抑制による増殖抑制がapoptosisの亢進によることが示唆された。apoptosisの亢進が培養細胞の足場への接着障害による可能性も考えられたが、LAD1発現抑制HSC-2細胞で、細胞播種後2時間までの初期接着に影響はみられなかった。また、LAD1の細胞遊走における機能を検討するため、wound healing assayを行ったところ、scratch面の閉鎖率が有意に減少したことから、LAD1の抑制により細胞遊走が阻害されることが明らかとなった。さらにLAD1の細胞内局在を詳細に検討すること目的に、免疫蛍光法を用いた超解像顕微鏡 (構造化照明顕微鏡) 観察を行ったところ、LAD1陽性は葉状仮足基部のactin arcおよびactin cortexに一致して認められ、actin線維の重合・脱重合過程に関連する可能性が示唆された。 口腔SCC細胞においてLAD1はactin分子調整を介し、癌細胞の生存・遊走を制御する可能性が示され、癌‐非癌界面での細胞生存に関連する可能性が見出された。
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