研究実績の概要 |
エピジェネティクスは、DNA塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現を変化させるものであり、組織発生や悪性腫瘍をはじめとした様々な生命現象や疾患の発症に関わるとされている。中でもDNAのメチル化は、主要な現象の1つである。近年、歯周病や口腔粘膜疾患の発症・進行への関与を示唆する報告があるものの、その詳細は未だ明らかとなっていない。環境因子がエピジェネティクス変化を引き起こすことから、口腔内細菌がこの変化に関わっているものと推測される。 本研究では、歯周病や口腔粘膜疾患の発症や進展に関わる口腔内病原細菌による、口腔上皮細胞のエピジェネティクス修飾の解明を目指し、新たに開発した培養系を用いて、DNAメチル化の網羅的解析を行う。この結果から、今後、歯周病や口腔粘膜疾患の発症や進展に関わるDNAメチル化のターゲットとなる遺伝子の同定を行うことを目的とする。 平成28年度は、マイクロアレイ解析結果で得られた炎症反応関連遺伝子にターゲットを絞り、UCSC Genome BrowserにてCpG Islandsが存在したものを選出した後、再現性確認の為 、定量的 Real-time PCR 法によるmRNA発現解析を行った。その結果、線維芽細胞増殖因子受容体(Fibroblast growth factor receptor3, FGFR3)及びアポトーシス関連因子(Caspase2, CASP2)においてmRNA発現低下を認めた。さらに、これらの遺伝子におけるメチル化レベルの解析を行う為に、DNAをbisulfite 処理後、Methylation-Specific PCR (MSP)法を行った結果、メチル化レベルの上昇を認めた。 以上より、P. gingivalis 由来LPSでの長期刺激による口腔上皮細胞の遺伝子発現変化には、CpG Islands高メチル化が影響し、FGFR3やCASP2といった炎症反応関連遺伝子がターゲットとなることが示唆された。
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