骨や歯牙では様々なタンパク質が協調的に作用し組織形成や石灰化が引き起こされる。これら硬組織に高発現する Dentin phosphoprotein (DPP) は、高度にリン酸化された Ser-Ser-Asp 繰り返し配列 (SSD配列) を持つ細胞外基質で、近年、積極的に近傍細胞を刺激する分子であることも明らかとなってきている。本研究では、組み換え DPP タンパク質並びに繰り返し配列を短縮した改変型組み換え DPP タンパク質を作製し、これら組み換えタンパク質が未分化間葉系幹細胞の硬組織形成細胞への分化に与える効果を検討し、更に、細胞外基質石灰化モデルを用いて硬組織細胞外基質としての活性を評価し、硬組織誘導・再生材料としての有用性を細胞刺激因子・基質双方の観点から検討し、将来的なヒトへの応用のための基礎的データを得ることを目的としている。 今年度は細胞外基質石灰化モデルを用いた DPP の石灰化効果を検討した。R. Dorvee らによって確立された細胞外基質石灰化モデルを用いて、各種組み換えタンパク質を封入したゼラチンゲルに沈着したリン酸カルシウムのカルシウムイオン量とリン酸イオン量を比較した。組み換え DPP タンパク質を添加したゲルは改変型組み換え DPP タンパク質を添加したゲルよりもカルシウムイオンの蓄積量が多かった。つまり、SSD 配列の長さに比例してイオン蓄積量が増加する傾向を示した。昨年の実績と合わせると、SSD 配列は長いほど石灰化誘導に有利であるが、短いほど発現・精製に有利であることが示唆された。
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