研究実績の概要 |
近年、可能な限り生活歯髄を保存しようとする機運が高まってきており、歯髄炎発症のメカニズムを解明すると同時に、どのような歯髄の状態なら歯髄保存が可能なのかを正確に知ることが非常に重要な課題となっている。 本研究では、免疫系に対して調節作用を有する因子の一つであるインターフェロンγ(IFN-γ)に着目し、ラット象牙芽細胞様細胞(KN-3 細胞)を用いて、歯髄最外層に存在する象牙芽細胞における自然免疫応答について検討を行い、以下のような結果を得た。 1.IFN-γで刺激したKN-3細胞において、炎症関連メディエーターであるCXCL10の産生が認められ、その産生量はNODリガンドと共刺激を行うことで相乗的に増加した。2.さらに、IFN-γで刺激したKN-3細胞に、NOD1リガンドであるiE-DAPを共刺激させることで、好中球走化性因子であるCINC-2の産生量が相乗的に増加した。3. 一方、ヒト歯髄細胞で発現が認められたインドールアミン酸素添加酵素(Indoleamine 2, 3-dioxygenase, IDO)については、KN-3細胞からの発現は確認されなかった。 これらの結果から、IFN-γが歯髄最外層に位置する象牙芽細胞のCXCL10やCINC-2産生に影響を与えていることが明らかとなり、IFN-γが歯髄炎における象牙芽細胞の生体反応において重要な役割を果たしていることが示唆されてた。 歯髄炎の病態形成におけるIFN-γの役割が明らかになることで、今後歯髄炎の病態解明だけでなく、歯髄炎の診断や新たな治療法の開発にも応用が期待できる。
|