研究課題/領域番号 |
15K20414
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
田村 ゆきえ 日本大学, 歯学部, 専修医 (40706785)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再石灰化 / 根管象牙質 / S-PRGフィラー |
研究実績の概要 |
根管治療を受けた根管象牙質は,根管拡大・形成によって歯質が菲薄化するとともに,根管貼薬によって歯質が脆弱化し,歯根破折が引き起こされる可能性が極めて高い。近年,Minimal Interventionという治療概念が普及し,歯質強化について広く注目を集めているものの,根管治療後の歯質強化については,不明な点が多いのが現状である。 根管治療を受けた歯根部象牙質は,機械的拡大によって菲薄化するとともに,各種根管貼薬材によって脆性化している場合が多い。また,根管充填の際に用いられるシーラーは,根管内の間隙を埋めることが主な目的である。試作シーラーは,水の存在下で酸反応性フッ素含有ガラスとポリ酸を酸-塩基反応させることで,ガラスフィラー中に安定なグラスアイオノマー相を形成させるPre-Reacted Glass-ionomer(PRG)技術を応用したイオン溶出液を用いるものであり,(Dent Mater J 29, 392-397, 2010.),これをシーラーとして応用することで,歯根の脆性化を防止しながら,確実な封鎖ができる可能性がある。 そこで申請者は,バイオアクティブな性質を有しているS-PRGフィラーを含有する根管シーラーを試作し,根管象牙質における状態変化を,光干渉断層画像診断法および超音波透過法を用いて検討することで,根管治療における新たな材料の開発および,歯質保存に有効な根管治療法の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画は以下であり、現在概ね順調に進行している。 1.根管治療象牙質モデルの作製 ウシ(2~3歳齢)の下顎前歯を抜髄し,その歯根の中央付近の象牙質を,直径4~6 mm,厚さ2~3 mmのブロックが得られるよう,モデルトリマーを用いて調整した。次いで,耐水性SiCペーパー# 2,000を用いて露出面が平坦となるよう,4×4×1 mmの大きさに調整した後,この象牙質ブロックの唇側面および側面をワックスで被覆した。3%EDTA溶液および1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に各1分間浸漬,形状測定レーザ顕微鏡(VK-9710,キーエンス,現有)を用いて象牙細管の開口を確認した後,フォルムクレゾールあるいは水酸化カルシウム製剤を歯髄側面に塗布し,この試片を37 ± 1℃,相対湿度90 ± 5%の環境下に1週間保管したものを根管治療象牙質モデルとして用いた。 2.超音波透過法を用いた弾性率測定 根管治療象牙質モデルに対して試作シーラーあるいは酸化亜鉛ユージノールを塗布,所定の保管期間が経過した試片の弾性率の経時的変化を超音波透過法を用いて測定を行った。得られた値,試片の密度および理論式から弾性率を求めることで,市販のシーラーと比較検討し,歯根部象牙質の機械的性質におよぼす影響について検討する。なお,測定時期は,試作シーラー適用前および適用後1から7日まで一日毎,および7,14,21,28,90および180日後とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,試作シーラーを根管治療象牙質モデルに適用した際の,象牙細管内および根尖部の状態変化について,OCTを用いて非破壊的に観察する。また,同一試片の表面性状の経時的変化を,レーザ顕微鏡を用いて,実験期間の終了した試片内部の形態変化を,走査電子顕微鏡を用いて観察することで,相互補完的に考察する。 研究計画は以下に記す。 .OCT,レーザー顕微鏡および走査電子顕微鏡による状態変化の観察 試作シーラーを適用した際の根管治療象牙質モデルの表層および内部の状態変化を,OCTで観察するとともに,A-scan modeからOCTイメージ像の変化を数値化することで,客観的評価を行う。また,同一試片の表面性状の経時的変化を,レーザ顕微鏡を用いて,実験期間の終了した試片の縦断面を,走査電子顕微鏡を用いて観察することで,象牙細管の封鎖性,管間象牙質の状態変化,細管内部での析出物の有無および根尖部の形態的変化などを観察し,相互補完的に考察する。なお,これらのの観察時期は,試作シーラー適用前および適用後1から7日まで一日毎,および7,14,21,28,90および180日後とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の旅費について予定よりも安価に抑えられたため,未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費と合わせて,実験消耗品の物品購入費,発表および研究打ち合わせのための旅費,論文の投稿および校閲費に充てる予定である。
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