研究課題
平成28年度は以下の研究計画に基づき良好な結果を得た。①試料採取および病理組織学的検索:外科処置が適応の被験者から根尖病巣組織を採取した。採取したサンプルを二等分し、一方をパラフィン包埋し、パラフィン薄切切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色の結果、108の根尖病巣サンプルのうち歯根肉芽腫は92サンプルであった。②蛍光抗体法による免疫組織化学的検索:Foxo3a抗体および白血球マーカー抗体を用いて、蛍光抗体法による蛍光二重染色法を行った結果、歯根肉芽腫中の好中球、Tリンパ球とBリンパ球からの発現を認めた。③ヒト白血球からのFoxo3aおよびFAS-L発現の検索:ヒト白血球のcell lineを培養した後、炎症性サイトカインを用いて刺激し、RNAの回収を行った。その後、Foxo3aとFAS-L遺伝子発現をreal time PCR法にて検索を行った結果、両遺伝子の発現を認め、コントロールとの有意差を認めた。上記①から②の結果は申請書に記載した仮説に基づいており、難治性根尖性歯周炎である歯根肉芽腫中の好中球、Tリンパ球とBリンパ球からのFoxo3a発現を認めた。③の結果から炎症性サイトカイン刺激により、培養細胞からのFoxo3aとFAS-L遺伝子の発現の上昇を認めた。これらの一連の研究活動から、平成28年度において国内・海外関連学会で研究業績を発表することができた。さらに、現在根尖病巣内でのFoxo3aの機能を検索するため、さらなる研究を遂行し、得られたデータと合わせ、国内・海外関連学会での発表および海外学術雑誌に投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度予定分としていた歯根肉芽腫組織およびヒト白血球からのFoxo3a発現の研究計画は現在、国内・海外関連学会で発表しているため、上記区分とした。この達成理由として綿密な研究計画をたて、研究協力者である武市准教授との定期的なグループディスカッションおよび国内・海外関連学会での他大学の研究者とのディスカッションを行ったこと、細胞培養後の刺激に際し、想定していた期間よりも早く良い結果が出たことにより、研究が円滑に遂行できたためと考えられる。
被験者から採取した根尖性歯周炎中の白血球、Tリンパ球およびBリンパ球からのFoxo3a発現が認められ、さらに歯根肉芽腫中での機能を検索するため、今後は細胞のアポトーシスを誘導し炎症に関与することが報告されているFAS-L抗体との蛍光二重染色を行い、Foxo3aとFAS-Lの共発現の検索を行う。また、根管浸出液中の白血球を採取し、その細胞中でのFoxo3aおよびFAS-L発現を免疫組織学化学的に検索する。さらに、採取した白血球をリコンビナントのFoxo3aを用いて刺激培養を行い、アポトーシスの抑制能を検索する。
当該年度、歯根肉芽腫中でのFoxo3a発現細胞同定のための抗体(Foxo3aおよび白血球のマーカー抗体)と試薬などが実験遂行に必要と思われていた量より少ない量で結果を出すことができ、消耗品費が安価に済んだためと思われる。
平成28年度余剰および平成29年度助成金を合わせ、歯根肉芽腫中のFoxo3aの炎症性細胞に対するアポトーシス抑制機能を検索するため、細胞のアポトーシスを促進し、炎症の増悪に関与するFAS-Lとの蛍光二重染色、さらに培養細胞でのカスパーゼ活性検索のための追加実験の消耗品費として使用し、得られたデータを、国内・海外関連学会での発表経費と海外学術雑誌への投稿料として使用していく予定である。
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