Er:YAG laserによる切削は従来の回転切削に比較し象牙質面に対するコンポジットレジンの接着強さが低い。レーザーの熱により象牙質面が変性し、プライマーの浸透に影響を与えていると考えられる。本研究では、レーザー切削象牙質面に蛍光色素含有セルフエッチングプライマーを応用し、共焦点レーザー顕微鏡によりその浸透性を評価・検討することである。 ウシ歯象牙質平面にEr:YAG laser(注水下)にて以下の条件(①50mJ/10pps照射、②150mJ/10pps照射、③250mJ/10pps照射、④50mJ10pps照射後150mJ/10pps照射)で窩洞形成を行い、各種表面処理(A: リン酸エッチング30秒、B: リン酸エッチング30秒後+NaClO 60秒、C: 処理なし)を行った。蛍光色素含有セルフエッチングプライマー処理を行った後、微小引っ張り強さ試験、アザン染色による観察、共焦点レーザー顕微鏡による観察を行った。 共焦点レーザーによる観察では横断面から観察することにより象牙細管へのプライマーの浸透深さや量を観察することができる。全実験群を通してB群のプライマーの浸透距離が深く、浸透量も多かった。次にプライマーの浸透深さ・量が多かったのがA群で、C群は浸透自体がまばらで深度も浅かった。レーザーの照射条件別では、パワーの高いものがプライマーの浸透度も高いと推測していたが、②群が高い結果となった。 微小引っ張り強さ試験では、レーザー照射条件の違いによる差はあまりでず、表面処理の違いではA群が最も高く、C群が最も低かった。プライマーの浸透度が高い群が微小引っ張り強さ試験の成績も良いというわけではなかった。以前行ったSEM観察ではB処理群の象牙細管はかなり広いロート状に観察されたため、残存象牙質が薄くなりすぎると破折する要因になっている可能性がある。
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