研究実績の概要 |
本研究の目的は, 新規に確立したマウスiPS細胞由来高純度象牙芽細胞と細胞増殖および抗アポトーシス制御作用を有したMMP-3の新規な分解基質の同定を生化学的手法 (siRNAによる特定タンパク質生合成阻害,細胞増殖性, アポトーシス細胞死, MMP-3活性測定, Real-time PCR法による遺伝子解析, ウエスタンブロット法など) を用いて解析し, 既存の歯髄保存療法に代わる新規な象牙質・歯髄複合体再生治療法のモデルを確立することである.平成27年度の具体的到達目標は, マウスiPS細胞由来高純度象牙芽細胞を用いた炎症性サイトカイン誘導MMP-3分解基質の解析, 炎症性サイトカイン誘導MMP-3分解基質の細胞増殖能の解析, および, 炎症性サイトカイン誘導MMP-3分解基質の細胞増殖シグナルの検討を行い, 以下の結果を得た. 1.マウスiPS細胞由来高純度象牙芽細胞を用いた炎症性サイトカイン誘導MMP-3分解基質の解析 マウスiPS細胞由来高純度象牙芽細胞を用いて, 炎症性サイトカイン誘導MMP-3の特異的分解基質をReal-time PCR法とウエスタンブロット法を用いて検討した結果, 象牙質異的タンパク(DMP-1)が炎症性サイトカイン誘導MMP-3の細胞増殖を誘導する基質であることが明かとなった. 2.炎症性サイトカイン誘導MMP-3分解基質の細胞増殖シグナルの検討 MMP-3 siRNAを用いて細胞増殖能を評価した結果, 統計学的有意な細胞増殖の抑制が認められ, 炎症下における象牙芽細胞の細胞増殖にMMP-3が関与することが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は, マウスiPS細胞の象牙芽細胞への分化誘導におけるMMP-3とExtracellular matrix metalloproteinase inducer (Emmprin) のシグナルカスケードの解析, および, 雌性C57BL/6J系マウスを用いたin vivoにおいて, 象牙質に特異的なマーカーである象牙質シアロタンパク質(DSP)の発現と象牙細管様構造を免疫染色法を用いて観察する.
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