研究課題/領域番号 |
15K20426
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
和田 敬広 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10632317)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯科理工学 / X線吸収微細構造 / 蛍光X線分析 / 歯科材料 / 生体材料 / 表面 / 界面 |
研究実績の概要 |
歯科材料として金属材料、無機材料、有機材料が組み合わされて用いられている。それらは生体とも深く結びついている。例えば、ジルコニアやレジンなどの歯科材料は接着材を介して歯質との界面を形成している。機能発現のためには界面に関する新しい情報は極めて重要である。多くの場合、分析のために切断や研磨等の処理や分析環境による影響を受ける。そこで、非破壊で物質に含まれる微量元素の種類・量が分かる放射光蛍光X線分析(SR-XRF)、特定原子の電子状態、周辺原子の種類、配位数、結合距離が分かるX線吸収微細構造(XAFS)、マイクロビーム技術を用いた二次・三次元分析を行い、表面・界面の状態を明らかにする。 本年度は、 1. SR-XRF及びXAFSの二次元、三次元分析の分析手法開発のため、形状が分かっている試料(ガスセンサー)で分析を行った結果について昨年に続き報告をした。 2. 充填用に用いられる歯科材料のグラスアイオノマー(GIC)の硬化機構を陽イオン側から実験的に確かめるために塩化カルシウム溶液に浸漬させ、GICに取り込まれたCaのXAFSを解析した。ポリアクリル酸カルシウムと似たスペクトルが得られたため、Ca-COO-ができていると考えられる。この結果は赤外分光法等との結果とも整合性がある。 3. 放射光を使用した分析を行う前の歯科材料の検討として、昨年に続き、ジルコニア、コンポジットレジン、ハイドロキシアパタイトと各種接着性モノマー、レジンとの表面・界面を一般的な分析を行った。 4. 歯科材料としても用いられる繊維強化熱可塑性樹脂は繊維と樹脂との界面の結合が非常に重要な材料の一つである。本年度は、放射光を用いた繊維・樹脂界面の分析を行う前に一般的な繊維強化熱可塑性樹脂を用いて、顔面保護防具への応用を検討のために必要な衝撃試験を行い、衝撃分散性能が優れていることがわかり、報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、生体材料の放射光蛍光X線分析(SR-XRF)、X線吸収微細構造(XAFS)の二次元・三次元分析を主に行う計画であったが、 1. 分析手法開発のための形状既知試料(ガスセンサー)での結果報告 2. 新たに試料検討した繊維強化熱可塑性樹脂の放射光分析前の実験、分析、結果報告 に想定以上の結果と時間がかかり、SR-XRF、XAFSの実験に移行する計画に遅れが生じた。そのため、研究期間の延長を行い、来年度に2年目で行う計画だったSR-XRF及びXAFSで分析を行う計画である。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の延長を行い、歯科材料、生体試料について放射光蛍光X線分析及びX線吸収微細構造を用いた実験を主として行いつつ、それらの結果と今年度までに行った一般的な分析手法(X線光電子分光法、顕微レーザーラマン分光法、赤外分光法、走査型電子顕微鏡、衝撃試験)での結果の成果発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料検討、結果報告に当初の計画以上に時間を要し、放射光施設での実験の計画に遅れが生じたため、放射光施設への旅費、利用費、消耗品の費用を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
放射光施設への旅費、利用費、消耗品および研究成果を公表するための国内外問わず学会発表、論文発表をする経費に充てる。
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