歯科材料として金属材料、無機材料、有機材料が組み合わされて用いられ、また、それらは生体とも深く結びついている。例えば、ジルコニアやレジンなどの歯科材料は接着材を介して歯質との界面を形成している。機能発現のためには界面に関する新しい情報は極めて重要であるが、分析のための切断や研磨等による影響を受ける。そこで、非破壊で物質に含まれる微量元素の種類・量が分かる放射光蛍光X線分析(SR-XRF)、特定原子の電子状態、周辺原子の種類、配位数、結合距離が分かるX線吸収微細構造(XAFS)、マイクロビーム技術を用いた二次・三次元分析を行い、表面・界面の状態を明らかにする。 最終年度は、ジルコニアの表面処理による各種接着性モノマーとの表面・界面に変化に関する分析や新規フィラー含有マウスガード材の表面分析を行った。 研究期間全体を通じて、 1. SR-XRF及びXAFSの二次元、三次元分析の分析手法開発のため、形状が分かっているガスセンサーで分析を行ない。ガスセンサーに使用されているパラジウム酸化物触媒が過酷な環境下では還元されて活性が変化し、都市ガス(主成分:メタン)へのセンサー感度が低下することがわかった。また、還元状況には一つの触媒内でも分布が生じており、分布の原因はヒーターからの距離(温度分布)やガスとの接触と考えられた。これらを論文等で発表した。(国際誌1報、国内誌1報、学会発表4報、その他2報) 2. 歯科材料のグラスアイオノマー(GIC)の硬化機構を陽イオン側から確かめるために塩化カルシウム溶液に浸漬させ、GICに取り込まれたCaのXAFSのデータを解析した。ポリアクリル酸カルシウムに類似したスペクトルが得られたため、Ca-COO-ができていると考え裸恵、赤外分光法等の結果とも整合性があった。 今後、一般的な分析に留まった系に関しては、XAFSを用いて分析する予定である。
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