歯冠修復材料および補綴装置の摩耗に関して,そのメカニズムを解明するには至っていない.近年のCAD/CAM技術の発展により材料開発は多様化し,破折強度に優れ,かつ高硬度のセラミックス材料が台頭してきているが,対合歯および対合補綴装置への過度な摩耗を誘発する事が懸念されている.そこで本研究では,異なる材料間での摩耗試験における摩耗量と,材料間に発生する接触ストレス,および材料強度の三者の関係性を明らかにする事で,摩耗を生じるメカニズムに基づく一般性のある評価方法を検討する事を目的とし,研究を進めてきた. 修復材料同士が咬合する摩耗をシミュレートするため,咬頭が咬合面をスライドする状態を模倣し,ボール状の試料がディスク状の試料を滑走する摩耗試験を用いた.試料製作には,歯科用CAD/CAMシステムを用い切削加工にてそれぞれの形状の試料を作製した.試料の摩耗量の計測を行うため,口腔内カメラを用いて3Dデータを取得し,形状でーたより算出した経時的な摩耗量の変化を計測した.さらに,摩耗試験における各材料同士が接触滑走を行う際にそれぞれの接触面に発生する応力分布を,有限要素解析を行いて算出し,評価を行った. 特にセラミックスにおいて,初期の接触時の歪み値が摩耗量を予測する上での重要な因子である事が示唆された.個々の材料特性に応じ,摩耗動態が異なることより,予測式を確立するためにはさらなる研究が必要である.
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