本研究は,部分床義歯(RPD)を装着した際に支台歯の周囲骨に生じる変化を視覚的に評価するために,エックス線写真を定点撮影し重ね合わせて変化の生じた部位を評価するデジタルサブトラクション法を用いた前向き介入試験である.被験者は,病院初診時に中等度~重度歯周炎と診断され,歯周専門医による歯周治療を受けてSPTに移行する段階で,RPDをはじめて製作する部分歯列欠損患者からリクルートを行った.被験者に対するRPD治療は,補綴専門医によって行われた.RPD装着前をBaseline(BL)とし,装着1週間後,1ヶ月後,3ヶ月後,6ヶ月後に,支台歯の歯周組織検査,エックス線写真撮影を行い,咬合圧をデンタルプレスケール(GC)で測定した.BLと各測定日の結果を比較検討した.エックス線写真はオーダーメイドの撮影上ジグを用いて定点撮影を行い,デジタルサブトラクション法を用いてBLと各測定日の写真を重ね合わせ,その濃淡の変化を骨密度の変化として算出した.その結果,RPD装着により支台歯が発揮する咬合圧は増加しても,従来の報告に見られる,RPDの残存歯への為害性は確認できず,歯周組織検査の結果は観察期間を通じて安定した結果が得られた.デジタルサブトラクション法による支台歯周囲骨の経時的評価については,RPD装着後1週間後に支台歯への荷重増加によると考えられるエックス線写真上の変化が認められるものの,その後はベースラインの状態まで概ね改善する傾向が認められた.本研究は,中等度~重度の歯周炎と診断された患者が対象であり,通常の補綴治療においてもハイリスクと考えられる患者層を対象としているにも関わらず,RPD装着後6ヶ月までの変化は明らかではなく,安定した結果が得られた.本研究結果から,歯周炎で歯を喪失した患者に対し,適切に設計されたRPDを適用することで,残存歯を健康的に保全できることが示唆された.
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