ヒト口腔粘膜上皮細胞と線維芽細胞を組み込んだ3次元培養口腔粘膜モデル(3DOMM)に対して義歯装着による刺激を想定した反復加圧刺激を加え、加圧期間中に回収した培養上清に含まれる骨代謝に関連する液性因子を定量し、加圧群と非加圧群とで比較・検討した。 1.sRANKLは加圧群・非加圧群ともにほとんど検出されなかったが、作成した3DOMMを免疫組織化学的に検討した結果では、加圧群でRANKLの発現が増強したことから、粘膜上皮ではsRANKLの産生はわずかであり、膜型RANKLの産生が活発に行われていることが示唆された。 2.骨芽細胞のRANKL発現を誘導するPTHとIL-11は、ほとんどの加圧群で増加したことから、加圧刺激により粘膜上皮から骨吸収を誘導するサイトカインが放出されることが明らかとなった。 3.M-CSFはRANKLとともに破骨細胞分化に重要な役割を担う因子であるが、ほとんどの加圧群において減少したことから、上皮細胞から放出されるM-CSFは加圧刺激によって抑制される可能性が示唆された。 4.炎症性サイトカインであり骨吸収誘導因子でもあるIL-1bとIL-6は、加圧群において増加した個体と減少した個体と両方がみられた。複数個作成した3DOMMの中でも、上皮層が多層に及び口腔粘膜組織に近い3DOMMでは減少し、重層化が少なく上皮層が一部断続的に形成された3DOMMでは増加する傾向がみられた。このことから、上皮層が薄く創傷がある口腔粘膜では、加圧刺激を受けると炎症や骨吸収が起こりやすいことが示唆された。
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