研究課題/領域番号 |
15K20433
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
河村 篤志 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (90645889)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | デンタルインプラント / 除去 / 加熱 |
研究実績の概要 |
平成27年度の動物実験では、ラット48匹に対して96本のインプラントを埋入した。治癒期間後にオッセオインテグレーションを維持していたインプラントは73本であった。これらをコントロール群と加熱群に分類し、さらに加熱群を除去トルク計測群と組織切片作成群に振り分けた。 組織学的所見では、埋入6週後のコントロール群はインプラントスレッド間も新生骨で満たされており、また新生骨・既存骨ともに骨小腔内にはヘマトキシリン陽性の骨細胞が認められた。加熱3日・7・14日後ではインプラント近傍に骨小腔の空胞化と骨髄腔の毛細血管拡張が認められ、骨小腔空胞化範囲は加熱後経時的に拡大していた。破骨細胞の同定を目的として、組織切片に対してTRAP染色を施した結果、骨小腔が空洞化したインプラントのスレッド周囲では破骨細胞は観察されなかったが、インプラントからやや離れた骨髄や軟組織に近い領域ではTRAP陽性の破骨細胞が確認できた。 除去トルク計測結果では加熱3日後と比較して加熱7・14日後では有意に除去トルクの減少を認めた。これらの結果から、除去トルクの減少は直接的なオッセオインテグレーションの破壊ではなく、インプラント周囲の骨髄や軟組織に近い領域に起こる骨吸収によるものと考えられた。 今回の実験では、加熱14日後の骨小腔空洞化範囲が切削器具で除去する際の骨削除量と同程度の範囲で観察されており、高周波電気メスの出力が大きすぎた、もしくは通電時間が長すぎた可能性がある。つまり温度設定が不適切な場合には、かえって広範な骨の破壊・吸収が起こると考えられ、低侵襲なインプラント除去を行うためには詳細な加熱条件の設定が重要であることが示唆された。今後の研究では高周波電気メスの出力や時間を変化させ、除去トルクの減少に有効かつ最低限のインプラント体温度変化を起こすための条件を検索することが非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画書では、平成27年度にインプラント体加熱によるインプラント体の温度上昇や周囲骨へ加える影響の範囲を詳細に観察するとともに、適切な加熱条件やインプラント体除去時期についても検討を行い、平成28年度にはその条件下で加熱し除去後の治癒過程を観察する予定であった。しかしこれまでの実験結果では、設定した加熱条件下での除去トルクの減少は認めたものの、加熱の影響範囲は予想よりも大きく、低侵襲な除去を行うためには更なる条件策定が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、加熱に使用するデバイスや除去時期に関しては適切であると考えられるが、今回の骨小腔空胞化範囲は予想されたよりも大きくインプラント体の温度が高すぎた可能性がある。加熱条件を検索することで、最低限のインプラント体温度変化によって除去トルクを減少させる条件が設定できると考えられる。今後は、電気メスの出力を減少させ、前回の実験と同じタイムポイントでのインプラント体の温度や除去トルク値、組織学的な変化について観察し、仮説の検証を行う。さらに、適切と考えられる条件下での除去後の治癒過程についても観察することで、臨床的に有用な加熱条件の詳細な設定が可能であると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の経費として計上していたラップトップPCおよび画像ソフトは現有の物やフリーソフトで代用した。また、インプラント体や組織標本製作器具などは他の実験で余った物を一部使用したため、その分の差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の通り、現在までの進捗状況はやや遅れており、平成28年度に加熱条件の策定と治癒過程の観察を行うため、予定よりも多くのサンプルが必要になると考えられる。そのため、動物やインプラント体の購入費に差額を当てる予定である。
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