インプラント治療の普及に伴い、インプラント体の除去が必要となる症例も増加している。インプラント除去手術には、切削器具を用いた周囲骨の削除が必要となることが多く、除去後の骨欠損拡大によりインプラント再埋入を含めた再補綴治療が困難になる。それに対して、インプラント体を加熱することで除去トルクを減少させ、術後の骨欠損を最小限にできるとの報告が散見される。本研究では、その効果や機序についての検証を行うことを目的としている。ラット上顎モデルを使用して行った昨年度の実験では、インプラント近傍の骨小腔空胞化範囲の経時的な拡大と破骨細胞の遊走が観察され、それに伴った除去トルクの減少が認めたれた。しかし、加熱14日後の骨小腔空洞化範囲が切削器具で除去する際の骨削除量と同程度の範囲で観察されており、高周波電気メスの出力が大きすぎた、もしくは通電時間が長すぎた可能性が示唆された。そのため今年度は電気メスの出力を減少させて同様の検証を行った。その結果、前年度と同程度の除去トルクの減少と破骨細胞の遊走が観察され、一方骨小腔空胞化範囲は前年度の結果と比較して減少することが観察された。このことから、低出力の加熱条件でもインプラント除去には十分であり、また骨への侵襲範囲も減少させることができることが示唆される。しかし、2条件のみでの解析では加熱の効果の検証には不十分であると考えられるため、今後は条件を増やしさらに詳細な検証を進め、欧文誌に報告予定である。
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