歯科インプラントの長期維持のためには、周囲組織との親和性が大切である。また、生体内での細胞レベルでみてみると、歯科インプラントも細胞外基質の一種として機能していると考えられる。そこで、本研究では細胞と細胞外基質との関係についての解析を行った。 歯小嚢由来の上皮系幹細胞を用いて、特殊なコーティングを行ったディッシュ上で培養を行うと、細胞はディッシュ底面に沿って増殖し、扁平な形態を呈した。しかし、3次元的に増殖することはなかった。そこで、別種のコーティング材料を用いて細胞を播種すると、細胞は凝集し球状のスフェロイド形態を呈することが分かった。一方で、細胞増殖に伴ってスフェロイドが成長するにつれ、持続的にその形態を維持することは困難であることが分かった。 生体内の環境では細胞は3次元的に存在しているため、その環境を模倣するモデルとしてゲルを使用した3次元培養法を用いた。その結果、細胞はゲル中でスフェロイド状の形態を呈することが明らかとなった。また、継時的な細胞増殖に伴ってスフェロイドはそのサイズが成長することが明らかとなった。また、3次元的に培養をする上で、数種の培地を適切なタイミングで用いると上皮系の細胞がブランチング状の形態を示すオルガノイドを形成する可能性が示唆された。 オルガノイドの特徴を探るため、各種の培養条件にて分化実験を行ったところ、歯小嚢由来の上皮系幹細胞が唾液腺のマーカーを発現するようになったことが明らかとなった。
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