研究課題/領域番号 |
15K20448
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
高瀬 一馬 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (90736836)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | C.albicans / 義歯リライン材 / 残留モノマー / BEAS-2B cell / surface roughness / water contact angle |
研究実績の概要 |
硬質リライン材の細胞毒性の評価については、単層培養や積層培養において十分な成績を納めている。細胞毒性の低い硬質リライン材の開発を手がけるに当たって、NIOM(ノルウェー)への留学時期も重なりさらなる目的を追加した。 リライン材は義歯床用材料である加熱重合レジンとは異なり、その経年的劣化具合、特にCandida albicansのコロニー形成などが目につくようになる。高齢者や要介護者の義歯装着者にとって、誤嚥性肺炎のリスクを減らすことはQOL向上に寄与するものと考える。そこで、経年劣化に伴うC.albicansのバイオフィルム形成能の違い、および材料の表面荒さ、水による接触角の違いがどう影響するのかについて検討を行った。経年劣化に伴い、リライン材は硬質、軟質共に表面荒さは増し、C.albicansのバイオフィルム形成も増加したが、水による接触角に関しては軟質では劣化とともに接触角の増加、硬質では減少と、相関関係を得ることはできなかった。そのため、材料表面に付着するC.albicansをCLMSにより評価を行ったところ、経年的な劣化によって表面荒さが増すことがC.albicansのバイオフィルム形成に影響を及ぼすというよりは、リライン材内の残留モノマーの減少が影響していると考えられた。現在、その溶出物および経年劣化後の溶出量の違いについてNIOMとの共同実験を行なっているところである。 細胞毒性に関しては、より細胞レベルでの実験を行なった。無血清培地により培養でき、かつヒトの組織であるという点でBEAS-2B細胞を使用し、アポトーシス、ネクローシスの判別、細胞周期、活性酸素、グルタチオンを測定した。これらの結果から、ISO規格で定められた溶出量によると、その細胞毒性は極めて微量であることがわかった。これらを参考に、細胞毒性が低く真菌付着も阻害する試作品を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NIOM(ノルウェー)留学のため、積層培養キットなどの手配が困難となり計画の一部は実行困難であったため。 さらにNIOMでの研究検討により計画の追加があり、主に追加した内容についての研究がメインであったため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後NIOMとの共同研究により、エイジング前後での残留モノマーの量を測定することが可能で、それぞれの残留モノマーによる細胞および細菌への影響を検討することができる。現在までの検討により、細胞への影響と細菌への影響は少し違うようである。しかし、細胞・真菌の種類でも違いがあるという報告もあり、さらなる検討が必要である。 エイジングによるリライン材の表面荒さ、水による接触角の影響はさらなる検討が必要である。現在までの検討ではこれらエイジングでの影響による両者の差を結論づけることができるが、C.albicansのバイオフィルム形成能に差があるのかは検討できない。これらは、より詳細に表面荒さと接触角の値を規定しそれぞれにおいて付着試験を行う必要がある。 細胞毒性に関しては、より細胞レベルでの検討としてウエスタンブロットによるpathwayの解析を行う必要がある。 研究途中で何か問題があれば、NIOMの研究員への問い合わせ、大学内での検討会などを行う予定としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ノルウェー(NIOM)への留学のため。
|
次年度使用額の使用計画 |
細胞、真菌培養に伴う物品、消耗品等の購入。 データ収集、補綴歯科学会、歯科理工学会、ISDRなど学会での成果発表。
|