本研究の目的は、インプラントのスレッドデザイン(=ネジ形態)がインプラント周囲骨組織の形成と微細構造にどのような影響を与えるのか検索することにある。咀嚼荷重がインプラントを介して骨組織に伝達されることを鑑みると、インプラントのスレッドデザインは応力分散に大きく関わり、ひいては周囲骨組織の構造変化の鍵を握ると考えられる。申請者らがこれまで行ってきた繰り返し荷重モデルを用い、多方面から骨微細構造解析を行って、最適なスレッドデザインを検討した。 申請者と研究協力者らは家兎とビーグル犬を用い、前年度の予備実験にて選別された骨質を変化させるネジ形態を付与したインプラントと、ネジ形態の全く付与されていないインプラントを抜歯後に埋入し、1)ビーグル犬には上部構造を作製して咬合力を付与し、2)家兎には規則的な繰り返し荷重を付与して屠殺後、解析を行った。その結果、ビーグル犬では、咬合力に反応性を示したインプラントネジ構造はのこ刃ネジ様であり、オッセオインテグレーションの有意な増大と、骨質に関連するコラーゲン線維の優先配向を認めた。さらにネジ形態を付与したインプラント周囲骨の高さは有意に高位に存在したことから、咬合力によって骨質が適応変化していることが考えられた。一方、ネジ構造が全くないインプラントでは、咬合力による骨質の適応変化は全く起こらず、インプラントはただ骨と結合しているだけに過ぎなかった。一方、家兎においては、特定の角度を有するのこ刃ネジ周囲の骨組織において有意な骨細胞ネットワークの発達と、コラーゲン線維/生体アパタイト結晶の優先配向を認めた。以上の家兎とビーグル犬のインプラント研究から、骨質を制御できるインプラントのネジ形態を詳細に明らかにすることができた。
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