研究実績の概要 |
平成29年度には,ナノジルコニアをフレームワークとして用いたパーシャルデンチャーの予後を引き続き追った結果,破折も生じていたが義歯の維持力の低下を認めた.この原因は,クラスプは鉤尖をアンダーカット領域に設定する必要があるが,着脱の際にナノジルコニアは従来のCo-Crなどよりも弾性が低いため支台歯との摩擦がより多く生じ,また,ナノジルコニアよりも耐摩耗性の低い支台歯のマテリアルの方が摩耗してきてしまうことによると考察している.そこでクラスプのみを熱可塑性樹脂に置換したところ良好な成果を得た. さらに,フルデジタルワークフローによる部分床義歯製作を完成させるために,すべての構成要素をデジタル製作することに取り組んだ.まず,光学印象から得たSTLデータをCADソフトウェアにインポートし,各構成要素をデザインした.デザインされた義歯床粘膜面部および研磨面部は,3Dプリンター(D30, rapidshape)を用いてPMMA(Base, NextDent)を積層造形し,フレームワークはナノジルコニアディスク,クラスプ部はPolyetheretherketone ディスク(PEEK, EVONIK),人工歯部はハイブリッドレジンブロック(VITA ENAMIC, VITA)からそれぞれ切削加工することに成功した.これら各構成要素を接着にて一体化し,フルデジタル製作による部分床義歯を完成,患者に装着した. この臨床例について術後評価を行ったところ,良好な予後を得たためこれらの成果を専門学会にて発表を行った.
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