研究課題/領域番号 |
15K20453
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
舘 慶太 昭和大学, 歯学部, 助教 (90585671)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 骨再生 / BMP-2 / TGF-BETA / 骨再生療法 / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 軟骨細胞 |
研究実績の概要 |
Bone morphogenetic protein (BMP)は皮下や筋肉内に埋入すると異所性の骨化物を誘導する能力があり、骨の再建に有用と考えられてきた。しかし臨床的に必要な骨量を誘導するには活性が弱く大量のBMPを用いるため、コスト面等の問題が実用化の大きな障壁となっている。申請者らはBMP-2とTransforming growth factor- β1 (TGF- β1)を併用することによりBMP-2の骨形成能を増強することがわかり、形成促進は低酸素誘導因子であるHypoxia Inducible Factor-1 (HIF-1)の発現が関わっている事がわかった。本研究の目的はBMP-2による骨形成とサイトカインや低酸素、異種細胞、ホルモン等の周囲の微小環境との関連性を明らかにし、それらを制御することによってBMPの生体内活性を高め、骨の欠損を再建する新しい治療を確立することである。BMP-2とTGF-β1によって骨形成が促進されたものの初期細胞塊の遺伝子解析を行い、TGF-β1添加群はBMP-2単独群に比較し、低酸素誘導因子のHIF-1の遺伝子発現が優位に高くなっていることがわかった。そこで我々はHIF-1と骨芽細胞、破骨細胞分化との関連性を調べた。マウスの骨芽細胞にHIF-1を添加したところosterix, osteoclasin等の骨芽細胞分化マーカー遺伝子は抑制されていた。また骨髄細胞にRANKL, HIF-1で刺激したところ、RANKL単独群よりHIF-1を同時添加したものの破骨細胞数が増加していた。BMP-2とTGF-β1添加したコラーゲンスポンジにDeferoxamine (DFO)を添加しても添加群と非添加群では異所性骨の骨量に変化はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度目標であった項目の③コラーゲン以外の担体の検討④BMP-2とTGF-β1以外のサイトカインやホルモンの検討が時間がなくできていないこと。 また②低酸素状態における胃所生骨形成の検討においてDeferoxamine (DFO)の濃度をわけて検討したがどの濃度でも形成された異所性骨形成に変化がなく、さらなる詳細な濃度検討が必要もしくは低酸素を引き起こす別の条件を検討する必要があると考える。 これらの理由からやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は平成27年度に達成できていない③コラーゲン以外の担体の検討④BMP-2とTGF-β1以外のサイトカインやホルモンの検討をおこなう。また②低酸素状態における胃所生骨形成の検討においてDeferoxamine (DFO)の濃度をわけて検討したがどの濃度でも形成された異所性骨形成に変化がなく、さらなる詳細な濃度検討が必要もしくは低酸素を引き起こす別の条件を検討する必要があると考える。 その他に①遺伝子導入した前駆細胞を用いた骨再建:初期組織塊を形成させ、摘出。その後コラゲナーゼを用い単離、構成する細胞にウィルスベクターやプラスミドを用いて低酸素誘導因子であるHIF-1を過剰発現させその細胞(1x106個)をコラーゲンゲルにまぜマウスの腹部に皮内注射する。そこに形成される異所性骨を時系列的、組織学的(組織切片等)、遺伝子的に比較検討する。また骨欠損部に埋入し、治癒経過を観察する。 ②微小環境の違いによって誘導される骨組織の構造解明:BMP-2を皮下に埋入すると異所性骨が形成されるが、骨組織の構造に着目した報告は少ない。そこで申請者らはBMP-2単体やDFOやより効率のよい骨形成が見られた組み合わせの条件によって誘導された異所性骨の骨組織の構造の比較を解析する。また埋入部位(後背筋膜下、顎骨骨膜下)の違いによる異所性骨形成の違いも比較検討する。③サル、ビーグル犬への骨欠損再建療法の検討:サル、ビーグル犬の大型動物に歯槽骨に骨欠損を作り、そこにBMP-2やDFOを含むコラーゲンスポンジを埋入する。その後の骨欠損の状態を経時的に観察し効率の良い条件を検討する。また同動物の後背筋膜下にBMP-2やDFOを含むスポンジを埋入、異所性骨を誘導し、その異所性骨を粉砕し自家骨として歯槽骨の骨欠損に移植し骨再生を試み、自家骨移植による骨再建を検討する。
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