研究実績の概要 |
Bone morphogenetic protein (BMP)は皮下や筋肉内に埋入すると異所性の骨化物を誘導する能力があり、骨の再建に有用と考えられてきた。しかし臨床的に必要な骨量を誘導するには活性が弱く大量のBMPを用いるため、コスト面等の問題が実用化の大きな障壁となっている。申請者らはBMP-2とTransforming growth factor- BETA1 (TGF- BETA1)を併用することによりBMP-2の骨形成能を増強することがわかり、形成促進は低酸素誘導因子であるHypoxia Inducible Factor-1 (HIF-1)の発現が関わっている事がわかった。本研究の目的はBMP-2による骨形成とサイトカインや低酸素、異種細胞、ホルモン等の周囲の微小環境との関連性を明らかにし、それらを制御することによってBMPの生体内活性を高め、骨の欠損を再建する新しい治療を確立することである。 平成27年度はBMP-2とTGF-BETA1によって骨形成が促進されたものの初期組織塊の遺伝子解析を行い、TGF-BETA1添加群はBMP-2単独群に比較し低酸素誘導因子のHIF-1の遺伝子発現が優位に高くなっていることがわかった。そこで我々は低酸素条件を発生させるDFOと骨芽細胞、破骨細胞分化との関連性を調べた。マウスの骨芽細胞にDFOを添加したところosterix, osteocalsin等の骨芽細胞分化マーカー遺伝子は抑制されていた。また骨髄細胞にRANKL,DFOを添加したところ、RANKL単独群に比較しDFO同時添加群は破骨細胞数が増加していた。 平成28年度はBMP-2とTGF-BETA1を添加したコラーゲンスポンジにDeferoxamine(DFO)を添加群と非添加群では異所性骨の骨量に変化はなかった。HIF-1は初期組織塊に影響をおよぼす可能性が示唆されたが、その詳細は解析が必要である。
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