顎口腔系に破壊的な作用をもたらす睡眠時ブラキシズムは補綴歯科治療の予後を左右する重要なリスクファクターであるが、その発症メカニズムは明らかでない。本研究では、研究代表者が過去に示した遺伝子多型リスクアレルを指標に、睡眠時ブラキシズム特異的 iPS細胞を樹立して神経細胞を誘導してその表現型の電気生理学的特性を明らかにすることを目的とした。 セロトニン2A受容体遺伝子(HTR2A)のrs6313(T102C)の一塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)の解析を行い、簡易睡眠ポリグラフ(PSG)検査を用いた睡眠時ブラキシズムの確定診断とリスクアレルであるC alleleの有無が合致する被験者(睡眠時ブラキシズム患者、コントロール)を選定して採血を行い、iPS細胞を樹立して神経細胞を分化誘導した。分化に際しShhにて背腹軸、CHIR99021にて前後軸を調整し、三叉神経関連領域である後脳腹側領域へと誘導領域を調整した。それらの誘導した神経細胞の中からセロトニン2A受容体発現神経細胞を識別するため、Venusを挿入したレポーターレンチウイルスを作成して浮遊培養開始後12日目に神経細胞に感染させた。その結果、レポーター蛍光反応を示す細胞が識別可能であることを確認した。さらに、睡眠時ブラキシズム患者由来の神経細胞と、コントロール群由来の神経細胞からそれぞれ、前述の方法にてセロトニン2A受容体を発現する神経細胞をレポーターの蛍光を指標として選択し、パッチクランプ法による電気生理学的解析を行った。その結果、生体の神経細胞と同様の静止膜電位と、電圧負荷をかけた際の活動電位の発生が確認された。
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