低温大気圧プラズマ処理は,生体に為害性をあたえることがなく,装置が小型であることから,歯科領域において,非常に有効な処理方法であると考える.低温大気圧プラズマ処理は,被検体のぬれをよくするため,歯冠修復材料などの接着に対する有効性が報告されている.しかしながら,低温大気圧プラズマをヒト天然歯に用いた報告はまだない. 歯冠部象牙質と接着性レジンセメントとの接着強さに各種表面処理方法が与える影響について検討した.使用する被着象牙質には,歯冠修復処置の既往のない新鮮な健全ヒト抜去小臼歯を用いた.抜去歯を歯冠最大膨隆部にて歯軸方向と垂直に切断し,切断面に各種表面処理を施した後,接着性レジンセメントを築盛した.表面処理方法は,①歯面処理剤のみ(Pm群),②低温大気圧プラズマ処理後に歯面処理剤にて処理を行った群(PsPm群),③次亜塩素酸ナトリウム処理後に歯面処理剤にて処理を行った群(以下NcPm群),④次亜塩素酸ナトリウム処理後に低温大気圧プラズマ処理を行い,歯面処理剤にて処理を行った群(以下NcPsPm群)とした.せん断接着試験の結果,NcPsPm群すなわち,次亜塩素酸ナトリウム処理後に低温大気圧プラズマ処理を行い,歯面処理材にて処理を行った群は最も高い接着強さを示した.次亜塩素酸ナトリウム処理により露出コラーゲンが除去され,低温大気圧プラズマ処理により,表面のぬれ性が向上し,プライマー成分が象牙細管深くまで入り込んだ結果,薄い樹脂含浸層が形成され,さらにレジンタグがより長く複雑に象牙細管内に入り込んだため,接着強さが向上したと考えられる. 以上から,歯冠部象牙質と,接着性レジンセメントとの接着強さは,次亜塩素酸ナトリウム処理後に低温大気圧プラズマ処理を行うことで向上することが明らかとなった.
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