研究実績の概要 |
本研究は,顎関節症(以下TMD)の事実上の世界的診断基準であるRDC/TMDを用いて, スプリント療法を施行する顎関節症患者の診断データを縦断的に収集する. 1.独自に開発した現行のタッチパネル方式を用いたアンケート・システムに VASを加え,顎関節部の痛みを定量的に評価できるようにする.また, 様々な年代の健常者に模擬的に回答してもらい,年齢的な正確性, 精密性を高める. 2.RDC/TMDを用いて,スプリント療法を施行する顎関節症患者を対象として, 治療前・治療中・治療後の診断データを縦断的に収集し, 各ステージ間における臨床上の変化とRDC/TMD診断の変化を比較する. 現在までに 1. についてはすでに終了しており, アンケート・システムの正確性や精密性を高めた.現在も継続して 2. のデータ収集に取り組んでいる. RDC/TMDを導入することにより診査診断は可能となったが, 顎関節症状に対する有効な治療法を選択するまでには至らなかったが, 各ステージ間における診断データの変化により,スプリント療法の適当性を評価することが可能となると考える. 特に心理社会的因子を有する患者に対し, スプリント療法が有効かどうかを見極めることを目的とする. 本研究が実現できれば,非侵襲的なスプリント療法がEBMのある治療法かどうかを見い出すことにより, 治療方針の選択が容易となり, 結果的に医原性の二次的な顎機能障害の発生も少なくなると考える. 特にTMD患者の治療における心理社会的因子の重要性が認識されている昨今では,心理面および社会面の診断(Axis II)で明らかに問題があると診断された患者に, スプリント療法が有効かどうかを明らかにすることは, 重要な意義があると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までのところ,顎関節症患者数が予想より若干少ない状況である.またスプリント療法以外で顎関節症状が軽快した患者や, 治療後のRDC/TMDの診断データが収集できない患者が存在するため, 予定被験者数に届いていないのが現状である.また研究期間途中ではあるが,平成28年7月から学外出向することとなったため, 顎関節症患者と接する機会が減少する可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
予定被験者数には至らない可能性もあるが,今後もスプリント療法を施行する顎関節症患者を対象として, 治療前・治療中・治療後の診断データを縦断的に収集していく予定である.また当院では, スプリント療法を施行する患者だけでなく, ほとんどの顎関節症の患者にこのアンケート・システムをおこなっていることから, 他の治療法を選択した患者の診断データも収集可能であるため, Axis IIで診断するうつや慢性疼痛などの心理社会的因子に, どの治療法が有効かどうか検討するなど, 研究計画の修正等も可能と考える. 学外出向後においても, タッチパネルを用いたアンケート・システムは持ち出し可能であるため, 出向先でもアンケート・システムのデータ収集は可能であり, データ集計等を行う場所の確保は出来ており, 問題なく実験を遂行できると考える.
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