口腔機能回復に有効であるインプラント治療においては、人工歯根であるインプラントと口腔内で機能する歯冠にあたる上部構造の双方が良好な機械的物性および生体親和性を有する事が要求される。さらに、前歯部の喪失症例においては審美的要求の高い領域とされ、残存する天然歯と調和のとれた歯冠職を実現する生体材料の開発が急務である。 重量として14%のニオビウムを含有するジルコニウム合金においては、先行研究および、本研究課題で行われた再現実験において、大気中での焼成による高温酸化処理を施す事で、合金表層に存在する酸化被膜層が母材深層へ拡大する事により白色を呈するため、金属材料でありがながら臨床応用において審美性を損なわないこと、酸化被膜と母材の間に強固な結合力が働いていることが報告されている。 平成28年度においては、平成27年度に行ったジルコニウム-ニオブ合金の機械的物性試験によって得られた最適な加工条件を元にして機械的物性の確認を行い、臨床応用に向けた生体材料として必要とされる生物学的観点からの評価を行った。 ジルコニウム-ニオブ合金に対して、金属色を呈する非処理面を持つサンプル、および白色の酸化被膜を有する高温酸化処理を施したサンプルについてそれぞれin vitroにおけるラット口腔内組織由来の細胞に対する為害性の確認、細胞機能への影響を評価した。結果として、14%のニオビウムを含有するジルコニウム合金において、ラット口腔内組織由来の細胞に対する毒性、または細胞機能への明らかな影響は認められなかった。
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