研究課題/領域番号 |
15K20482
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野村 俊介 九州大学, 大学病院, その他 (60710994)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炭酸アパタイト / 連通多孔体 / 気孔径 / 骨置換 |
研究実績の概要 |
申請者らは骨の無機組成が炭酸アパタイトであることに着目し、前駆体を用いた溶解析出反応による炭酸アパタイトの調製法を確立した。炭酸アパタイトは破骨細胞に吸収されるため、海面骨のように連通多孔体化によって骨置換速度の飛躍的加速が期待される。そこで申請者は連通多孔体化のために球体の六方最密充填構造に着目し、球が連結されてできた骨補填材は完全連通気孔をもつ骨補填材となり、また球径を変えることで、球間に形成される気孔径を制御することができると考えた。本研究では気孔径を制御し、気孔径が炭酸アパタイト連通多孔体の骨置換速度に及ぼす影響を検討することを目的とした。 球を最密充填するには、形態のそろった球体を作成する必要性があり、申請者は油の中に水滴を落とすと界面張力によりその水滴が球形になる現象を用いたW/Oエマルジョン法で球体を作成した。完全な球体を作成するためにはエマルジョンの中で水相成分が固まる必要性があるため、自己硬化性のある半水石膏をもちいて球形を作成した。当該年度はW/Oエマルジョン法による石膏小球の球径制御が可能かをまず検討した。攪拌速度を変動因子とし、攪拌速度と得られる石膏小球の球径の関係を求めた結果、速度が上昇するにつれて、得られる石膏小球は小さくなることがわかり、1000rpmを超えると、直径1mm球を得ることができなくなることが分かった。また攪拌速度を変えたことによる球形態に違いは見られないことが分かった。 次に異なる直径の石膏小球で連通多孔体の作製が可能かを検討した。推定気孔径が400、300、200、100μmになるように小球のサイズを直径1.00-1.18、0.71-0.85、0.50-0.60、0.21-0.30mm に分類し、それぞれ異なる大きさの小球で連通多孔体の作製を行った。結果、それぞれの球径において連通多孔体の作製が可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は異なる球径の石膏球から気孔径の異なる石膏連通多孔体を調製し、当該多孔体を前駆体として炭酸アパタイト連通多孔体を調製し、炭酸アパタイト連通多孔体の気孔径が物性に及ぼす影響を検討するとともに、同連通多孔体を実験動物に埋入し、病理組織学的に連通多孔体の気孔径が炭酸アパタイトの骨置換速度に及ぼす影響を解析することである。 当該年度は炭酸アパタイト連通多孔体の気孔制御が可能であるかの検討を行った。連通多孔体の気孔径は球径の大きさによって制御でき、また石膏小球から気孔径の異なる石膏連通多孔体を調製し、組成変換させて炭酸アパタイト連通多孔体を調製できることを確認した。実験動物を用いての病理組織学的解析が可能な状態である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究計画の2年目にあたり、①実験試料の追加解析および②動物実験、病理組織標本での検討を行う。昨年度において、粉末X線回折装置および赤外分光分析にて組成分析を行い、目的の試料が作製されていることが確認できたため、今年度は物性についての検討をおう。ピクノメーターを用いての気孔率の測定、走査型電子顕微鏡による微細構造の観察、CHNコーダーによる炭酸アパタイト顆粒の炭酸基含有量の測定を行う。 また、動物実験では日本白色家兎の大腿骨に骨欠損を作成し、調製した骨補填材で再建を行う。組織標本は一般組織染色(H&E染色)を行い、補填材の吸収程度、新生骨のリモデリングを評価する。また補填材の吸収が見られた場合、破骨細胞性によるものかを判断するために、TRAP染色を行い破骨細胞が生じているかを確認する。また、骨の形成速度はテトラサイクリン、カルセイン、キシレノールオレンジなどの骨ラベリング法により検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は炭酸アパタイト連通多孔体の気孔径が物性に及ぼす影響を検討するとともに、同連通多孔体を実験動物に埋入し、病理組織学的に連通多孔体の気孔径が炭酸アパタイトの骨置換速度に及ぼす影響を解析することを目的とする。当該年度は主に物性に関する研究を行い、動物実験を次年度に行うこととしたため、当該年度開始する予定であった動物実験分の費用を次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は動物実験を主に行う予定である。日本白色家兎大腿骨への骨補填材埋入を予定しており、実験動物用費用がかかることが予想される。また結果解析用のための機器の購入を予定している。
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