申請者らは骨の無機組成が炭酸アパタイトであることに着目し、前駆体を用いた溶解析出反応による炭酸アパタイトの調製法を確立した。炭酸アパタイトは破骨細胞に吸収されるため、海面骨のように連通多孔体化によって骨置換速度の飛躍的加速が期待される。そこで申請者は連通多孔体化のために球体の六方最密充填構造に着目し、球が連結されてできた骨補填材は完全連通気孔をもつ骨補填材となり、また球径を変えることで、球間に形成される気孔径を制御することができると考えた。本研究では気孔径を制御し、気孔径が炭酸アパタイト連通多孔体の骨置換速度に及ぼす影響を検討することを目的とした。 前年度までにおいて、異なる径をもつ形態のそろった球形を同条件で作製し、その作製した小球を用いて連通多孔体を作成することに成功したため、本年度は実験動物を用いての組織学的解析を行った。動物実験では日本白色家兎大腿骨に骨欠損を形成し、気孔径の異なる4種類(気孔径100、200、300、400μm)の炭酸アパタイト連通多孔体を、また対照試料として炭酸アパタイトブロックを埋入した。埋入4,8週後に大腿骨及び周囲組織をとりだし、固定を行った。標本はマイクロCTにて硬組織評価を、また一般組織染色(H&E染色)を行い、補填材の吸収程度、新生骨のリモデリングを評価した。結果、炭酸アパタイトブロックでは埋入8週後でも顕著な吸収は見られなかった。一方、炭酸アパタイト連通多孔体では気孔径に関わらず、気孔への組織の介入を認め、また気孔径400μmの炭酸アパタイト連通多孔体では顕著な吸収は見られなかったが、気孔径100μmでは吸収が見られることが分かった。
|