研究課題
本研究は、歯牙矯正を利用した骨造成法のプレ実験として、歯牙を効果的に移動させる方法であるクローズドコルチコトミーを検証することが目的である。歯牙矯正時にクローズドコルチコトミーを併用することで治療期間の短縮を期待できるため、イヌを用いて組織学的・放射線学的評価を行った。そもそも歯根膜誘導型歯槽骨造成法とは、歯牙矯正に伴い歯根膜に存在する未分化間葉系細胞が骨芽細胞に分化誘導されることにより、狭小化した顎堤の歯槽骨の再生を図るものである。低侵襲かつ自己組織を利用した安全な方法であり、歯根膜誘導による骨再生のため、再生された骨組織は長期間に渡り安定的に維持されることが期待できるため、大変意義深い研究であるといえる。実験方法はまず前処置として、下顎左右第3前臼歯を抜歯した。次に片側の下顎第2前臼歯部の粘膜骨膜弁を剥離し、近遠心の皮質骨を削合して歯槽骨皮質骨切除術(クローズドコルチコトミー)を行い、反対側はコントロール群として処置なしとした。その後、両側下顎第2、4前臼歯(P2,P4)に矯正装置を装着し、クローズドコイルスプリングで牽引(牽引力約200g、期間:14週間)した。術後2週ごとにP2、P4間の距離の測定および規格X線写真撮影を行った。手術後14週後に安楽死を行い、脱灰標本を作製し組織学的評価を行った。2頭中1頭は飼育ケージを咬むなどしてワイヤーが変形し、歯が傾斜移動したため、正確なデータは得られなかった。もう1頭では、コルチコトミーを行った方で明らかな移動量の増加が認められ、セメント質、歯根膜、固有歯槽骨が三位一体となり移動したと考えられた(組織標本は現在作製中)。ただ、この個体でもわずかにワイヤーの変形が認められたため、本実験では確実な歯体移動のために、飼育ケージに網を張るなどしてワイヤー変形を防ぐ必要があると考えられた。
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Clinical oral investigations
巻: 20(7) ページ: 1791-1800
10.1007/s00784-015-1680-4