下顎骨に原発あるいは浸潤する悪性腫瘍の治療法として区域切除を選択する場合があるが、切除のみでは下顎骨の連続性が断たれ患者にとって著しいQOL低下をきたすこととなる。 本研究では、術後の審美性や咀嚼嚥下および構音機能の低下に影響を与える高難易度の手術として、下顎区域切除および顎骨再建手術を対象とし、手術プロセスの改善に寄与する定量的な術前シミュレーションの開発とその評価を行った。 今年度は、本対象手術患者20人の術後整容性を評価した。審美性の評価は、患者および臨床医による主観評価をおこなった。しかし、審美性に対する基準は評価者間また評価のタイミングで違いがあり、臨床医複数人で評価した。また、新たに客観評価として、3Dカメラにより得られた画像を解析した。術後の3D顔面画像は、非再健側を正中で反転し再健側と重ね合わせることで、この両者間の誤差として「差分体積」「最大陥凹値」「最大突出値」を新たな定量評価として提唱し検討した。 下顎骨の切除量が増加すると、臨床医による整容性の主観評価は低下していた。しかし、評価者間でのばらつきが見られた。患者による主観評価は、下顎骨の切除量を含め、手術による因子とは相関せず、それぞれの審美性の基準が異なることが原因と考えられた。 複数人の臨床医による主観評価の平均と3Dカメラで得られ、今回我々が新たに提唱する「差分体積」「最大陥凹値」は負の相関を示しており、新たな術後整容性の評価として有用であると考えられた。 この新たな客観的定量評価を用いることで、評価者による整容性の違いを解消できるとともに、複数人での評価を行うより短時間での評価を可能とすると思われた。
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