研究課題/領域番号 |
15K20492
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
廣田 正嗣 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (50734860)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯科用インプラント / ジルコニア / アパタイトコーティング / 分子プレカーサー法 / 表面改質 / スクラッチ / ナノ秒パルスレーザ / サンドブラスト |
研究実績の概要 |
本研究は,早期定着,長期維持を目指した骨に親和性のある新規ジルコニアインプラントの開発を目指し,密着性や均一性に優れた分子プレカーサー法によるアパタイト薄膜コーティングを用いた表面改質について,基材の種類や基材表面の前処理の条件の検討を行っている.現在までに以下のような実績を得たので報告する. イットリア安定型正方晶部分安定化ジルコニア(Y-TZP)に分子プレカーサー法によって炭酸含有アパタイト(CA)薄膜コーティングを施し,スクラッチ試験機を使用して密着性を評価した.ダイヤモンド圧子によりCA薄膜をスクラッチ後,光学顕微鏡下で剥離荷重を測定した結果,チタン上に形成させたCA薄膜に比較してY-TZP上に形成させたCA薄膜において,有意に高いLc値,14.83N±0.32(臨界剥離荷重値)が得られ,CA薄膜がY-TZP基板上に強固に接着していることが明らかとなった. コーティングの前処理の検討として,Y-TZPの平板試料に対して,30μm×60μmの照射領域で鈞状にナノ秒パルスのYVO4レーザを,出力2.08J/cm2,周波数50Hz,ステージ送り速度2μm/sの条件で走査させることによって,深さ30μm,幅30μmのマイクロオーダーの凹凸構造が30μmピッチで製作可能であることが明らかになった. また,セリア安定型正方晶部分安定化ジルコニア(Ce-TZP)の試料上に分子プレカーサー法によるCA薄膜コーティングを試みた結果,走査型電子顕微鏡(SEM)および原子間力顕微鏡(AFM)によってアパタイト様の構造物が確認でき,Y-TZP上に形成させたCA薄膜とアパタイトの結晶形態が類似していることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度に予定していたin vitroにおける研究計画は概ね順調に進展しているが,当初の計画とは異なり研究方策の変更もしくは中止が必要な項目について以下に列挙する. 当初予定していたサンドブラストやレーザ照射による表面改質を行った上からCA薄膜コーティングを施すと,表面形状が粗くなってしまい膜の接着強度を測定するスクラッチ試験を行うことが困難であったため,PBSへの長期浸漬実験にて代用する. ナノ秒パルスレーザによる試料表面の加工におけるレーザ照射の時間や出力,走査法などの条件について,目的とした凹凸形状を付与するのに予想以上の長い加工時間を要したため,実用性を考えた上で,条件設定について改良を検討している.加えて,今後予定された動物実験に使用する試料の形態,動物種及び術式の変更も考慮している. ブラスト処理による前処理を行うために当方のサンドブラスト装置を使用して,研究費で購入したアルミナサンドブラストを噴射する際に,装置の技術的トラブルが発生し,装置修理に時間を要したため,ブラスト条件の試料に関しての実験は28年度への繰越を検討している.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従いin vivoにおける実験に取りかかる他,以下のような方策を考えている. 分子プレカーサー法によりY-TZP上にコーティングしたCA薄膜の接着強度が高かった理由として,基材そのものの熱膨張係数が関連していることが考えられたため,当初の研究計画に加えて,焼成温度条件600℃の他に,800℃,1000℃での2条件を増やし,AFMによる結晶形態の観察やPBSへの長期浸漬,スクラッチ試験による膜の耐久性,密着性の評価により,Y-TZPへの接着メカニズムを模索する実験を追加予定である. レーザ照射試料は,in vitroで観察した後,試料形態を決定した上で,ウサギ脛骨モデルからラット大腿骨の埋入モデルへの変更を検討している.サンドブラスト試料については,Ce-TZPの機械的強度が高いため,アルミナビーズに加えて,ジルコニアビーズを使用して表面粗さに違いが出るかを,検討項目として加えたいと考えている. これらの成果は,2016年11月4日~6日に開催される国際歯科材料会議(IDMC)2016(インドネシア)にて発表する予定であり,さらに関連学会の機関雑誌へ論文投稿を予定している.
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